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まちにダイブしよう!経済メカニズムを熟知して、地域の価値を高めれば、誰もが喜ぶ結果を導き出せる

まちにダイブしよう!経済メカニズムを熟知して、地域の価値を高めれば、誰もが喜ぶ結果を導き出せる

株式会社アフタヌーンソサエティ 清水義次

 東京・表参道といえば、名だたるブランドのフラッグシップ店が軒を連ねるファッションストリート。だがその姿は、1990年代初め、参道の起点近くで始まった一つのプロジェクトを端緒に、自然にブランドが集積してかたちづくられたものだった。今ある姿を〝予言〞し、事業計画を牽引したのが、アフタヌーンソサエティ代表取締役の清水義次氏だ。その根底にある徹底的な社会観察をベースにした「リノベーションまちづくり」の発想は、今、全国各地の都市再興の現場に導入され、新たな可能性を広げつつある。

まち歩きで都市の魅力に開眼。観察眼を磨く

1949年生まれ、団塊世代である清水氏の〝技〞の原点を探るには、中学生時代まで遡る必要がある。

「父親の仕事の関係で、野山しかないような田舎から甲府市に転居したんですね。甲府の下町が面白かった。背が高かったから、私服だと中学生には見えないわけです。これ幸いと、チャリに乗ってはいろんな所に入り込んでいって。なんというか、猥雑で、活気があって、まちっていいなあ、と強く心に焼き付けられたのです」

大学に合格、上京すると、〝まち観察〞にさらに磨きがかかっていく。

「よく出かけていたのが、青山通りの草月会館です。そこに美術、演劇、音楽、映画などあらゆる分野の面白い人たちがいました。やっぱり東京はすごいなあ、と。で、そんなふうに遊びに行くと、必ずまち歩きをするわけです。例えば最初は何の変哲もなかった原宿が、60年代終わりから70年代初めぐらいの時期にどんどん変貌していく。都市は生きているんだと実感しました」

そんな青年が就職先に選んだのは、マーケティング・コンサルティング会社だった。「新聞の求人欄に『面接のみ』と書いてあった」のが志望動機なのだが、それは清水氏の人生を方向づける奇跡的な〝出合い〞でもあった。

「ひとことで言うと、世の中に顔を出し始めた〝時代の変化の芽〞みたいなものをキャッチするのが与えられた任務でした。クライアントはあらゆる業種の大企業で、それを新規事業立ち上げなどの参考にするのです。当然、現場は〝まち〞です。何か面白いことが起こっていそうな所に行って、とにかく写真を撮りまくり、分析する。学生時代まで好きでやっていた社会風俗観察の延長線のような仕事でしたね」

実際、そうした視点で都市を見つめていると、「時々不思議な現象が立ち現れてきた」そうだ。

「例えば80年代の初め頃、渋谷の街に、特に目的もなくたむろする高校生の姿が目立つようになったんですよ。観察すると、買い物をするでもなく、何となく集まっておしゃべりしてたりする。『これはいったい何だ?』と。もしかすると、お金の消費ではなく、『時間消費』に価値を見いだす社会が到来しているのか、というのが仮説の一つでしたね。まあ、そんな感じで時代の先読みをしていたわけです」

担当したビジネスは成功を収め、常務にまで昇格した清水氏だったが、41歳で、突然丸17年間勤めた会社を辞める。「コンサルタントはいいけれど、結局自分でリスクを背負って実業をやってみないと世の中の本当のところはわからないのでは、と感じるようになった」のが、大きな理由だった。

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価値を生むのは敷地ではなく〝エリア〞である

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PROFILE

清水義次

清水義次

しみず よしつぐ/

1949年、山梨県生まれ。東京大学工学部都市
工学科卒業。同大教養学部教養学科アメリカ科
中退。マーケティング・コンサルタント会社勤務を
経て、92年、アフタヌーンソサエティ設立。主なプ
ロジェクトとして、東京都千代田区神田RENプロ
ジェクト、CET(セントラルイースト東京)、3331ア
ーツ千代田、新宿歌舞伎町喜兵衛プロジェクトな
ど。地方都市においても、北九州市小倉家守プ
ロジェクト、岩手県紫波町オガールプロジェクトな
どで、公民の遊休不動産を活用しエリア価値を向
上させるリノベーションまちづくり事業をプロデュ
ースしている。近著に『リノベーションまちづくり 不
動産事業でまちを再生する方法』(学芸出版社)

株式会社アフタヌーンソサエティ

設立/1992年4月
代表者/清水義次
所在地/東京都千代田区外神田6-11-14
3331 Arts Chiyoda 309

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