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「大規模商業施設の創造=まちづくり」生活者の未来へ向けた新たな価値をデザイン

「大規模商業施設の創造=まちづくり」生活者の未来へ向けた新たな価値をデザイン

スペース東京事業本部商環境研究所

モノが売れない時代価値ある商空間とは

株式会社スペースは、ショッピングセンター(SC)、量販店、専門店のほか、ビジネスおよび公共空間などの調査から企画、デザイン、設計、施工などのサービスを総合的に提供する“商空間創造企業”である。

同社は、担当者が“打ち合わせ”から“引き渡し”までの全業務フローを把握する独自の組織体系でも知られるが、ここ商環境研究所は、主に企画・設計 デザインに特化した部門だ。特に、SCや駅型商業施設などの大型プロジェクト、新規事業領域の開拓を得意としている。

「それこそ更地の状態からマスタープランを立案、平面計画、環境デザインもセットでデベロッバーに提案します」とは、所長の森田昭一氏。

「一連の業務を把握する担当者を、当社では“営業”と呼び、彼らは半年ほどの短期プロジェ クトを多数推進します。一方、研究所が担当するのは、中長期かつ大型のプロジェクト。世の中の動きを見ながら、最適な提案をしていきます」

彼らが目指すのは商業施設に よる新たな価値創造だ

彼らが目指すのは商業施設に よる新たな価値創造だ。モノが 売れない時代に、店舗は何を表 現すべきか。この問いに対する答えを、実績として積み重ねている。“まちづくり”はその一例だ。横浜駅東口地下街ポルタは商業施設でありながら、横浜のランドマーク的存在である。このリニューアル案件を、コンペを経て受注。勝因は“横浜らしさ”の打ち出しだった。

ポルタはイタリア語で扉、門を意味します。リニューアル前の施設にもイタリアっぽさがありました。競合他社は、その延長線にある提案をした。でも私たちは“まちの顔”ともいえるこの場所に、横浜らしさを取り 戻そうと考えました。ポルタのエントランスに、横浜の歴史的建造物である“横浜三塔”を模したモニュメントを置いたのもそのためです。商業施設設計の仕事は、“箱”をつくるだけでは終わりません。お店がより繁盛する、まちの雰囲気が変わる――そこに面白さがあるのです」

思いに裏打ちされたアイデアで勝負

思いに裏打ちされたアイデアで勝負

同研究所の陣容は17名。建築系出身者とデザイン系出身者とに二分されるが、同研究所と営業部との間の人事異動も、しばしば実施されているという。

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無駄なく空間を使ったオフィス。「お客さまとしっかり向き合う真面目な社風。派手なことはやらない。もう少し面白みがあってもいいのですが(笑)」と森田所長

「双方にとって意味がある異動なのです。ゼネラルなスキルを持った営業が一つ特化したスキルを持てば、クライアントへの提案の幅が広がります。また研究所の人間が営業を経験すれば、顧客第一主義の視点が肌で学べます。設計の経験だけだとコスト的に実現不可能なものを提案したり、施設完成後の運営面をおろそかにする恐れが出てくることも。一度、営業を経験した人間のほうが、そういった感度は高いかもしれません」

とはいえ、専門知識が要求される業務であるのはいわずもがなだ。「幅広くアンテナを張って世の中を観察してもらいたいそうでなくてはクライアントが求めている仕事はできませんと森田氏は強調する。

クライアントの向こう側には、エンドユーザーがいる

そして、クライアントの向こう側には、エンドユーザーがいる。自分たちがいいと思うデザインを主張したり、クライアントから指示されたデザインをそのままなぞることはしない。エンドユーザーが価値を感じる商環境をつくることこそが使命なのだから。その背景には、「ただSCのカタチをつくるだけでお客さまが集まる時代ではない」という危機意識がある。

「この仕事は顧客の要望に応えてさえいれば大きなクレームにはなりません。でも、我々は常に生活者が本当に必要としているものを提案したい。そこでもがき苦しみ、日々考え続けたことが優れたアイデアになります。コンペにおいても、デザイン面だけでは競合他社との差が明確につき難い。採用されるのはデザイン以前のデザイン、すなわちアイデアの構成力の差です」

最後に、同社が求める人材像について聞いた。「常に新たな価値創造を意識し続けられる人材を育成していきたい。私たちが求める設計者の条件は、何よりその“思い”を共有できるかどうかです」

PROFILE

執行役員商環境研究所所長  森田昭一

執行役員商環境研究所所長 森田昭一
Shoichi Morita

もりた・しょういち/大手内装企業で10年間の業務実績を積み、

2000年9月、株式会社スペース入社。

専門店、大型SCなどの、マスタープラン作成、環境デザイン、設計業務などに携わる。

一級建築士。

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