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不動産×建築 ハイレベルな 通訳業務とは何か?

不動産×建築 ハイレベルな 通訳業務とは何か?

霞ヶ関キャピタル株式会社/「Architectural Design Management」部門

卓越したファイナンス手腕を武器にホテル事業などを展開する霞ヶ関キャピタル株式会社。その社内で建築デザインを専門とする「Architectural Design Management」部門の業務実態に迫る。

提案を多角的に検討し、最適な決断を導くそれが我々の仕事です。

─不動産企業のなかにある建築デザインチームというのは、非常に独特ですよね。「Architectural DesignManagement(以下、ADM)」は、どのような仕事をしているのでしょうか?

松本:外部から見ると、非常にわかりにくいですよね(笑)。不動産会社の建築部門というだけでも世の中に少ないですし、ビジネススキームが金融系ということもあり、「スケジュール管理をするだけのPM/CM」と見られているかもしれません。

確かに「プロジェクトをまとめる」という側面もあるので我々の部署名にも「マネジメント」という言葉が入っています。ADMは、ただ管理だけをする訳ではなく、当事者意識を持って建築設計を含めた「デザイン」を総合的にプロデュースしています。 私にとっての「デザイン」とは、単に床や壁の仕上げを格好良くすることではありません。建築は照明、防災、空調など様々な機能の複合体です。必要な機能をデザインの中にきちんと取り込み、全体のイメージを阻害しないように配置や設置方法を整えることこそがデザインだと私は考えています。 例えば、客室の構造フレームや階高、スパンが決まった時点で、空間はほぼ決まってしまうので、箱だけ作って後から格好良くしようとしても限界があります。なので、「デザイン」は企画段階から始まっているんです。最初から完成形を見据えて計画することで、厳しい予算の中でも質の高い空間が作れる。そういう所まで考えるのが、建築の「デザイン」だと思っています。

─具体的な仕事の流れはどのようなものでしょうか?

成井:我々のクライアントは社内のホテル事業部です。「何平米の部屋を何室作ってほしい」といったビジネス的な要望がまず来て、それを我々が設計事務所やデザイナーと協力して形にしていくという流れになっています。 ADMは、クライアントと設計者・デザイナー・施工者の間に立つ〝通訳〟のような役割と言えるかもしれません。例えば、社長から「かっこいい感じのオフィスにして」と一言で言われた時、その「かっこいい」が何を指すのかを汲み取り、設計者に伝えなければ、両者の間に齟齬が生まれてしまいます。我々〝通訳〟の能力によって、出来上がるものが全く変わってくるので、非常に重要な役割だと自負しています。松本ADMが立ち上げに携わったホテルブランド「fav」を例にすると、まず社内の事業部から「部屋の大きさ」「収容人数」「部屋数」といったビジネス的な要望が来て、それを我々が設計事務所やデザイナーと一緒に、敷地条件や予算の中でどう実現するのがベストかを考えていく、という流れです。

プロジェクト進行にあたっては、人件費を抑えることで損益分岐点を下げてコロナ禍でもプロジェクトを止めずに進めたり、その土地の「地域性」をどう表現するかという点を重視しながら改良を重ねたりして、favブランドを築き上げていきました。

─プロジェクト全体の成否を決める重要な役割ですね。そのようなハイレベルな〝通訳〟業務をこなすには、どのようなスキルが必要ですか?

松本:極論を言えば、設計者以上に設計を、デザイナー以上にデザインを、施工者以上に施工をわかっていなければなりません。しかし、それは現実的には不可能です。だからこそ、「こうじゃないか」と推測できる力が重要になります。

成井 私も建築の設備や構造は専門外で知識が多いとは言えません。だからこそ、わからないことは関係者やその道の専門家に「聞ける力」も大事だと思っています。

松本:どれだけ経験があっても、わからないことは無限にありますからね。経験値そのものよりも、高いコミュニケーション能力と、建物に対する「興味」が根幹にあるかどうかが重要です。興味を持てば、自然と「どうすればできるんだろう」と考え、人に聞くことができますから。関係者から出てきた提案を、運営や施工など様々な視点から検討し、決断していくというのが我々の役割です。

─では最後に霞ヶ関キャピタルで働くことの魅力について教えて下さい。

松本:一般的なPM/CMはコンサルタントであり、提案はしても最終判断はクライアントにお任せする面があります。しかし、我々は事業の当事者なので、ソリューションを提案し、その実現まで責任を負います。当然、失敗した時の責任も負いますが、だからこそやりがいがあると感じますね。

最近、設計の仕事からPM/CM領域へと流れる人が多いと聞きますが、物作りをしたいという気持ちがある人こそ、霞ヶ関キャピタルはその想いを実現できる環境だと思います。

■霞ヶ関キャピタルが手がけるホテルブランドの事例。

❶2024年9月9日にオープンした石垣島のハイエンドリゾートホテル「seven x seven石垣」

 

❷2025年9月1日にオープンした、富士山を望む「edit x seven 富士御殿場」

 

❸香川県高松市にある多人数向けホテル「fav TAKAMATSU」。モダンで快適な41室を提供する4つ星ホテルである。

 

都市型ホスピス住宅「CLASWELL信濃町」。住宅街に調和するモダンな外観デザインと、利用者の尊厳と快適性を重視した内部設計が特徴。

 

2024年9月に竣工したLOGI FLAGシリーズ初となる冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」。
PROFILE


 

成井愛理 /Airi Narui

Architectural Design Management

2019年 株式会社スペース入社、店舗内装のデザイン・設計・施工・監理までを一気通貫で経験。その後、2022年霞ヶ関キャピタル入社。

 

松本豊/Yutaka Matsumoto

Architectural Design Management

1989年(株)長谷工コーポレーション入社、米国留学を経て森ビル(株)にて元麻布ヒルズ、六本木ヒルズを担当、Grosvenor Limitedにてグロブナープレイス代々木神園町を担当、2020年霞ヶ関キャピタル入社。

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