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オランダ留学時の学びで研究の道へ。 国内外の地域計画に携わりながら、 未来に役立つ“点と線”を提案する

オランダ留学時の学びで研究の道へ。 国内外の地域計画に携わりながら、 未来に役立つ“点と線”を提案する

東洋大学 理工学部 建築学科 地域デザイン研究室

団地再生の研究から地域計画の実践へ

東京工業大学の学部生時代は意匠設計を志していた田口陽子氏。そんな彼女が都市計画へ舵を切る契機となったのは、大学院時代の留学経験にある。
 当時、世界の建築界で勢いのあったOMAを主宰するレム・コールハースや、建築家集団MVRDVなど、オランダの建築家が用いる都市的といえる設計手法に惹かれて、デルフト工科大学に留学した。

「オランダの若手建築家が手掛ける集合住宅に惹かれて留学しましたが、その背景にある近代の画一的な住宅団地を調べ始めました」

 田口氏が注目したアムステルダム郊外の巨大団地「バイルマメーア」は、そもそも中産階級をターゲットに建設されたが、その後、低所得者層の流入により荒廃が進んだことで、OMAのコンセプトに基づき再生事業が行われていた。彼らの提案は忠実には実現されなかったが、建物やランドスケープの更新により公共空間が再編され、画一的な巨大団地は多様な活動が行われる都市に再生した。

「公共空間のユーザビリティの向上が地域状況の多様化に貢献するという仮説を立てて調査を行いました。もともと単一の細胞が体の中で臓器や神経など別の器官に分かれていくように、画一的な団地も場所に合わせて異なる機能をもたらすことで、有機的な都市空間として発展できる可能性が感じられました」

 最終的に田口氏は、バイルマメーアでの調査を学位論文にまとめ、研究者としての人生を歩み始めることとなる。

■注目の研究

「Future Arita」で江越邸に展示されたオランダの2組のアーティストによる襖絵と映像作品。
アートにより有田の未来をプロトタイプとして提示した

左/フィリピンで行われたパブリックスペースづくりのワークショップでは、現地の子供たちに意見を聞く機会も
右/ある自治体と協力したまちづくり計画では、学生も関係者と共にまちづくりワークショップに参加
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自助的な動きを促すまちづくりを提案

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PROFILE

准教授 博士(工学)
田口陽子

たぐち・ようこ/
1997年、東京工業大学工学部建築学科卒業。
2001年~02年、オランダ・デルフト工科大学建築学部留学。
05年、東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻(博士課程修了)、同大補佐員。
06年、米子工業高等専門学校建築学科助手・助教。
08年、佐賀大学理工学部都市工学科助教・講師・准教授。17年より現職。
一級建築士。

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