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まちにダイブしよう!経済メカニズムを熟知して、地域の価値を高めれば、誰もが喜ぶ結果を導き出せる

まちにダイブしよう!経済メカニズムを熟知して、地域の価値を高めれば、誰もが喜ぶ結果を導き出せる

株式会社アフタヌーンソサエティ 清水義次

 東京・表参道といえば、名だたるブランドのフラッグシップ店が軒を連ねるファッションストリート。だがその姿は、1990年代初め、参道の起点近くで始まった一つのプロジェクトを端緒に、自然にブランドが集積してかたちづくられたものだった。今ある姿を〝予言〞し、事業計画を牽引したのが、アフタヌーンソサエティ代表取締役の清水義次氏だ。その根底にある徹底的な社会観察をベースにした「リノベーションまちづくり」の発想は、今、全国各地の都市再興の現場に導入され、新たな可能性を広げつつある。

価値を生むのは敷地ではなく〝エリア〞である

91年秋に退職、92年に3人の仲間とアフタヌーンソサエティを設立した。時あたかもバブル経済が崩壊。だが、〝まちを知る男〞はその経済環境もプラスに転化してしまう。港区南青山3丁目という一等地で、銀行の不良債権になっていた民家(廃屋)を4軒借り
ることができたのだ。

「実は〝実業〞といっても具体的にやることは決めてなかったんですよ(笑)。でも、このロケーションだったら飲食だろう、と直感しました」

その道のプロを雇って始めてみると、思惑は当たり、店は大繁盛。すると、そこに思ってもみない現象が起こる。

「周囲に飲食やインテリアショップなどの店舗ができ始めたんですよ。気がつけば、3年で25店舗くらいの集積になっていて、駐車場と野良猫だらけだった風景は一変。まちは民間の力だけで変えられるということを、身をもって体験しました」

こうして地域の活性化に貢献した清水氏に、92年春、仕事場からほど近い表参道の再開発プロジェクトへの参加要請が届く。

「具体的には、表参道交差点近くの1900坪の土地の再開発について知恵を出してほしい、というものでした。当時の表参道って、若者向けのストリートファッションの店が立ち並ぶ場所だったんです。ですが、あえて『建物は世界の一流ブランドが呼べるスペックにすべきだ』と提案しました。ビル自体はオフィスがメインの企画でしたけど、足元がブランドショップとなれば、家賃も変わってくるでしょう」

だが、当初は「一流ブランドが呼べる」と言っても信じる人などいない。一人確信を持てた裏には、やはり社会観察に裏づけられた読みがあった。

「当時、パリでもニューヨークでもロンドンでも、ブランドのフラッグシップ店がまちのメインストリートに、それなりの規模感で出店するのがトレンドになっていたんです。その流れは、いずれ東京にも来るだろうと想像がついた。では東京のどこか? 銀座界隈は本命として、次は表参道をおいてほかにはないわけです。若い頃から東京は舐めるように観察し尽くしているので、これは確かだと思いましたね」

予測は現実となる。99年に完成した青山パラシオは「ブランドが呼べない」どころか、1階と2階、約275坪のテナントコンペの結果、1階の坪単価が周辺相場の3倍強に。スペースを射止めたのはグッチだった。

開発の肝は、まだある。〝建物〞〝敷地〞ではなく、あくまでも〝エリア〞第一の設計を貫いたことだ。

「誤解を恐れずにいえば、東京における総合設計制度を使った開発にまともなものはありません。公開空地を設けるといいながら、それは付け足しで、みんな建物本体にどれだけいい床をつくるためにしか、頭が向いていないのです。社会風俗の観察者から言うと、実は敷地には大して価値がない。エリアに新たな価値が波及するような開発をすれば、不動産の価値もしっかり保たれる。ですから表参道のプロジェクトでは、ビルの背後への公開空地の動線もしっかりつくり込みました」

持論が正しかったことは、プロジェクトの大成功を見て、ストリートに有名ブランドが次々に出店したことで証明される。空き家を4軒借りたところから、周囲の街並みを変えた〝成功体験〞の再現だった。

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行政と〝正しく〞組むことで、まちは生き返る

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PROFILE

清水義次

清水義次

しみず よしつぐ/

1949年、山梨県生まれ。東京大学工学部都市
工学科卒業。同大教養学部教養学科アメリカ科
中退。マーケティング・コンサルタント会社勤務を
経て、92年、アフタヌーンソサエティ設立。主なプ
ロジェクトとして、東京都千代田区神田RENプロ
ジェクト、CET(セントラルイースト東京)、3331ア
ーツ千代田、新宿歌舞伎町喜兵衛プロジェクトな
ど。地方都市においても、北九州市小倉家守プ
ロジェクト、岩手県紫波町オガールプロジェクトな
どで、公民の遊休不動産を活用しエリア価値を向
上させるリノベーションまちづくり事業をプロデュ
ースしている。近著に『リノベーションまちづくり 不
動産事業でまちを再生する方法』(学芸出版社)

株式会社アフタヌーンソサエティ

設立/1992年4月
代表者/清水義次
所在地/東京都千代田区外神田6-11-14
3331 Arts Chiyoda 309

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