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Architect's magazine

多くの人が新しい体験や気づきを 得られるような場、ものをつくりたい。 そのために必要なことは 何でもチャレンジする

多くの人が新しい体験や気づきを 得られるような場、ものをつくりたい。 そのために必要なことは 何でもチャレンジする

永山祐子

 26歳の時、若くして独立した永山祐子は、住宅はもちろん商業施設の空間設計、話題の大型プロジェクトなど、スピード感をもってその活躍の場を広げてきた。代表的なプロジェクトに「LOUIS VUITTON京都大丸店」「豊島横尾館」などがあり、近年のものとしては「ドバイ国際博覧会日本館」や「東急歌舞伎町タワー」が挙げられる。とりわけ光のデザインに定評がある永山だが、素材のポテンシャルを引き出し、新しい現象を起こすというチャレンジングな取り組みが印象的だ。「建築は未来を描く仕事」だと定義する永山にとって、〝チャレンジ〞は極めて重要な支柱となっている。

空想世界を楽しんだ少女時代。早くから独創性を発揮する

 父親は生物物理の研究者、母親は化学系の技官と、血筋としてはバリバリの理系である。そして、谷口吉郎氏の下で建築を学んでいた祖父。ルーツ的に〝建築〞は近い世界だったが、永山がそれを意識するのは少し先、高校3年になってから。ただ、ものづくりにおいては早くから独創性を発揮しており、今につながる才を垣間見せている。

自分で物語をつくって、その設定で遊んでいるから友達も必要なかったぐらい。自己完結傾向が強かったのでしょうね。あとは『風の谷のナウシカ』とか、気に入った映画を何回も観ると映像や台詞を全部覚えちゃうので、眠れない時は頭のなかで映画1本分を再生したり……。もう一つ、大好きだったのがイームズ夫妻の本、『パワーズ・オブ・テン』。衝撃を受け、自分の体の内部には宇宙があって人が住んでいる、あるいは、私は誰かの体のなかにいるのかもしれないと、フラクタルな世界に想像を巡らせていました。周囲からは、変わった子と思われていたかもしれません(笑)。

 ただ、地元の同級生たちには、私が今のような仕事をしているのは想定内だと言われました。昔、工作の授業で「虫の家をつくる」という課題を出された時、虫が苦手な私は、勝手に、顔がうさぎ、体が蝶々の「うさぎ虫」というキャラクターをつくったんですよ。で、そのうさぎ虫の家をつくり、ひいては詩にもして、それが廊下に張られたものだから、有名になっちゃって。ストーリーを考えたり、いろんなことを想像して世の中にないものをつくったりするのが好きなのは、どこかで今に通じているのかもしれません。

永山は、東京都八王子市の恵まれた自然環境にある共立女子第二中学校・高等学校で6年間を過ごしている。子供の頃は体が弱かったこともあり、「自然のなかで育ってほしい」という親の意向を受けての中学受験だった。

 高尾の山のほうにあって家からは遠かったけれど、自然のなかで過ごしたことで、実際逞しくなりました。中学時代は野外研究部に入って、虫をつかまえたり、観察ノートをつくったり、野草を食べるとか……。虫嫌いも克服できたし、自由で楽しかったですね。

 高校は理系クラスに進んだので、多くの宿題に時間を取られて部活はできなかったけれど、父の仕事や野外研究部の影響を受けて、やっぱり先は生物の世界だと思って勉強していました。バイオテクノロジーが注目されていた時期でしたし、先述した『パワーズ・オブ・テン』で描かれていたミクロの世界に興味を持っていたので、大学はバイオを専攻しようと。

 それが、ガラリと変わったのは高校3年の時。たまたま友達と進路の話をしていたら、彼女は「建築家を目指す」と言うわけです。それを聞いた途端、いろんな記憶が呼び起こされたんですよ。早世した祖父が建築家を目指していたこと、形見となった数々の美しい建築本。そして、実家を建て替えた時の気持ち、大好きだった泡を模したような公園の遊具……もう一気にピースがつながった感じで、「私にも建築のルーツがあったわ」と。これ、バスに乗っている15分間の話で、直感的に進路を変えたのです。急な進路変更で受験できる大学が限られていたなか、履修している科目から選んだのが昭和女子大学の生活科学部(当時)でした。

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様々なインプットを得て、アトリエ系事務所へ。建築の道を邁進する

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PROFILE

永山祐子

永山祐子
Yuko Nagayama

1975年12月18日 東京都杉並区生まれ
1998年3月 昭和女子大学
生活科学部生活美学科卒業
4月 青木淳建築計画事務所入所
2002年4月 永山祐子建築設計設立
家族構成=夫、息子1人、娘1人

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