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緻密かつ少量生産の木造建築材料を正確に加工する「ロボット棟梁」。ソフトからハードまで開発する研究室

緻密かつ少量生産の木造建築材料を正確に加工する「ロボット棟梁」。ソフトからハードまで開発する研究室

千葉大学大学院 工学研究科 平沢研究室

ソフトウエアとして建築部材を考える

ロボットアームが木材を削り、伝統木造建築の精緻な納まりをスピーディかつ正確無比に再現する。千葉大学の平沢岳人教授は、コンピュータ技術をフル活用した建築構法を研究、建築を部材単位で精緻に表現するデジタルアーカイブの作成に取り組みながら「ロボット棟梁」の開発を手がけている。

平沢教授は東京大学の構法研究室でハードウエア的な部品設計や建築モデュールの基礎を学んだ。その後、進んだ博士課程で、建築部品の定義をソフトウエアに置き換える研究を試みる。

注目の研究

学内にある大型の多関節ロボットは5m程度の木材の加工が可能。ロボット自ら“道具”を交換しながら、切る、刻むなどの一連の作業を続けて行うことができる。丸鋸は直径が500mmあり、大断面の木材の加工も可能だ。現在は4種類の工具を持ち分けられるが、宮大工が行うすべての加工を網羅するために工具をさらに増やす計画だ。ロボットと工具を接続するハード部分とコントロールのためのソフトウエア開発を進めている


「研究を始めた1988年頃は、BIMという概念すら存在していませんでしたが、部品のディテールをソフトウエアとして記述しておけば、将来、何かしらの方法で実物に変換できると考え、研究を進めていました」

博士課程を修了後、建設省(当時)の建築研究所でソフトウエアの研究開発に携わった後、千葉大学に赴任する。ここで学生に「GDL」のプログラムによるモデリングを教え始める。

ARCHICADライブラリオブジェクトのプログラミング言語であるGDLは、ディテールをつくり込む道具として有効なため、設計時に活用すれば、施工段階での〝出戻り〞が大幅に削減される。さらに、国宝や重要文化財などの貴重な木造建築を保全するためのデジタルアーカイブ作成時にも力を発揮する。外観イメージをCGで再現するだけではなく、GDLで三次元モデルを作成することで、改修時や再現工事に役立てることができるのだ。

「GDLで作成したデジタルアーカイブは、原寸データを入力するため、そのまま加工情報として使えるほどの精度です。当研究室で、千葉県にある法華経寺五重塔を調査し、構造材を主とする約7000個の部材をデータ化しました。検証のため3Dプリンタで15分の1模型を制作しましたが、仕上がりは抜群。それでは飽き足らなくなり、より実物に近い再現を目指し、ロボットによる木材の加工を試みることにしたという経緯です」

工作機のハードウエア設計は3Dモデリングで行い、時には物理エンジンを組み込んだシミュレータを開発し、動作を入念に検証した後、制作に移行する手順を踏んでいる。2012年から開発を始めたのが、丸鋸。木材を正確に加工する五軸加工機で、数値制御により、微妙な角度や形を正確に裁断する。墨付けの手間もいらず、加工スピードや精度は人間の技術を遥かに超えるという。

木造カテナリードーム

格子状の部分はオリジナルの五軸加工機で、脚の部分はオリジナルのロボット加工機で加工・制作した木造カテナリードーム

さらに、仕口や継ぎ手などの伝統木造建築特有の繊細で複雑なディテールを加工するために、汎用的な産業用腕型ロボットに「角のみ」などの刻み加工ができる刃物を持たせた「ロボット棟梁」も開発した。独自のソフトウエアを用いて目的物の3Dデータから加工するためのロボットの動作を生成することで、自動的に部材を切り出していく。

螺旋階段の手摺などに見られる三次元の広がりを持ちながら滑らかに連続する造作は、高度な職人技を持ってしても製作が難しいが、ロボットなら曲率の連続性に破綻を生じさせることなく製作可能。多品種少量生産に向いているため、一つひとつ違う部材が多く集まる伝統木造工法などに適している。

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ロボット加工が伝統木造改修を補助

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PROFILE

平沢岳人

平沢岳人
教授 博士(工学)

ひらさわ・がくひと
1988年、東京大学工学部建築学科卒業。
93年、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了、博士(工学)。
96年、建設省(現国土交通省)入省。
建築研究所第四研究部研究員、同主任研究員、同研究主幹、フランスCSTB客員研究員、
INRIA招聘研究員を経て2004年10月、千葉大学工学部助教授。
07年4月、千葉大学大学院工学研究科准教授、16年4月より現職。

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