アーキテクト・エージェンシーがお送りする建築最先端マガジン

Architect's magazine

MAGAZINE TOP > 注目の大学研究室 > 東京都市大学 工学部 建築学科 小林研究室

人の心理・行動と明かりの関係を探究。地域・空間が有する情景を守りながら、フィールドワークで最適手法を導き出す

人の心理・行動と明かりの関係を探究。地域・空間が有する情景を守りながら、フィールドワークで最適手法を導き出す

東京都市大学 工学部 建築学科 小林研究室

学生と共鳴しつつ新たな価値を創造

桜並木のライトアップ

桜並木のライトアップ 横線・都立大学駅から続く桜並木のライトアップを小林研究室が行うのは去年に続き2年目。この緑道は47年前に呑川を暗渠にしてつくられたことから、桜を美しく照らすだけでなく、独自考案のライトアップにより、川の流れを足元に再現している


現在、同研究室では「都立大学駅前・桜並木ライトアップ〜桜と川と街の物語〜」と題したプロジェクトに携わっている。地元商店街とタイアップしたかたちでの参加だ。当該駅前から続く桜並木の下には47年前に暗渠化された呑川が流れている。そこで、桜のライトアップだけでなく、かつての川の流れを想起させる明かりを設計した。明かりの投影方法は、学生が試行錯誤を重ねながら考案。透明なバッグに入れた水にポンプで空気を送り込み、青い光を当てて足元に投影することで川の揺らぎを表現した。また、前年度は地域の方々から暗渠化前のまちの写真を収集し、モノクロプリントして展示。今年は地元の小学校でワークショップを開き、子供たちが未来のまちの様子を表現した窓明かりの模型を制作。それらを展示した。

山形県金山町の協力により試作された杉のランプシェード。

山形県金山町の協力により試作された杉のランプシェード。薄い木口を透過した朱色の明かりが本能的に癒やしを感じさせる

同研究室ではすべてのプロジェクトにおいて小林教授の意向を伝えた後に、学生主導の方針でディスカッションを重ねて研究を進めていく。その後、フィールドワークを繰り返しながら、最適な方向性を導いていくというスタイルだ。

「学会発表やプロジェクトを見た方から、共同研究やデザインの打診をいただき、自分の関心の範囲はさらに広がっていきます。以前の空間心理的な研究は自分主導のスタイルでしたが、今は学生が考えている面白さを引き出したい。新しいプロジェクトの刺激と学生たちの個性に、積み上げた自分の知識を組み合わせながら、既存の価値を超えた明かりの効果をさらに探求していきたいと思っています」

ページ: 1 2

PROFILE

小林茂雄

こばやし・しげお
1991年、東京工業大学工学部建築学科卒業。
93年、助手に着任。
98年、博士(工学)取得。
2000年より武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部建築学科講師。
03年、准教授。
04年にネヴァダ州立大学ラスヴェガス校客員研究員を務める。
11年より現職。日本建築学会賞(論文)など受賞多数。

人気のある記事

アーキテクツマガジンは、建築設計業界で働くみなさまの
キャリアアップをサポートするアーキテクト・エージェンシーが運営しています。

  • アーキテクトエージェンシー

ページトップへ