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「脱請負」を掲げ磨いた、 社会課題への対応力――。 まだ見ぬ未来で輝くために、 常に新たなチャレンジと、 知見の進化・深化を継続

「脱請負」を掲げ磨いた、 社会課題への対応力――。 まだ見ぬ未来で輝くために、 常に新たなチャレンジと、 知見の進化・深化を継続

前田建設工業 建築設計部門

 1919年創業の前田建設工業は、青函トンネル、東京湾アクアラインなど大型公共インフラの施工にかかわってきた。80年以降は〝建築事業〞が拡大。超高層マンションや大規模商業施設などの実績を積み重ね、近年は請負のみならず、自らが事業主となる「脱請負」を推進し、「コンセッション事業」に参入したことも話題に。時代の要請
を受けながら、持ち株会社体制にも移行。新たな挑戦を続ける、同社の建築設計部門の今とこれからを聞いた。

〝変わり続ける〞人材が活躍できる環境

さて、コンセッション事業の推進には、ゼネコンのプロパー社員のみならず、多様な人材・能力が必要とされる。そのため、コンセッション事業を専門とする部署を立ち上げ、設計者、施工者はもちろん、財務や法務のスペシャリストなどの拡充・中途採用を進めている。同時に設計部門の業務自体も変化し続けている。設計者に要求されるスキルも増えているのだ。

「極論すると、従来の建築設計は、要件定義に則って図面を描くのが仕事。〝与えられたお題目を解く〞ことができればよしとされました。しかし、事業主として建築を考えるからには、これからの設計者には事業主目線も必要になってくる。社会性や環境性も問われます。例えばコンセッション事業を受注する前段階では、専門部署と一緒になって『こんな地域貢献ができる、こんな社会的意義がある』と行政に提案するプロセスがありますが、これも従来の設計者にはなかった業務。現実には、ゼネコンだけではできないことも多々あると思っています。行政や地域のNPO、そのジャンルを得意とする設計事務所の方々と協業するなかで、学んでいる段階ですね」

こうした〝設計者としてのあるべき姿〞の変化を、現場の設計者たちはどのようにとらえているのだろう。

有明ガーデン(東京都江東区/2020年)
都内最大規模(約10.7ha)の大規模複合開発地域の一画。200店舗を構える商業施設だが、四季を感じられる地上広場や大規模な壁面緑化など、周囲の環境に配慮がなされている

「建築にかかわる者として、『変わらなければならない』という危機感は皆当然持っていると思います。特に若い世代は、学校で『いつまでも設計という仕事があると思うな』と聞かされているようで、学ぼうとする意欲は非常に高い。また、建築といえば従来〝ものづくり〞のイメージが強かったと思いますが、若い世代は、建築といえば社会課題を解決する仕事、ビジネスそのものをつくる仕事、というイメージを持っている。どんどん機会を与えて、成長させていきたいですね」

一方で、中途採用の門戸も開かれている。森野氏曰く、求める人材像は〝変わり続けられる人〞とのこと。前田建設がそうであるように、一つの考え方に固執せず、時代や環境の変化を敏感に察知し、自らを変えることを恐れない人材を随時募集している。現在、設計部門で活躍するメンバーの2割は中途採用者だという。

「中途採用者のバックグラウンドは様々ですが、最近は中堅ゼネコンからの転職組も多いでしょうか。当社以外のゼネコンではなかなか経験できない、建築における〝川上〞の仕事に魅力を感じてくれているようです」 

社外からやってくる人材の目に映る前田建設の魅力は、ほかにもある。例えば、19年に新設された「ICI総合センター」だ。オープンイノベーション、人材育成、情報発信と3つの機能を併せ持つ独自の施設であり、技術研究の拠点でもある。

「客観的に見て、前田建設の特徴の一つに、〝型にハマらない建築物〞があると思っています。例えば桐朋学園宗次ホールは、楽器のように響く純木造の音楽ホール。ICI総合センター内には、閉校した小学校をコンバージョンした施設もある。こうした型にはまらない建築物は新技術の開発なしでは生まれません。東京藝術大学国際交流棟で採用された木造と鉄骨造の混構造もICI内で実験が行われました。社外の方にも『すごくいい環境ですね』と評価していただけています」

付け加えると、同社は「完全実力主義」を掲げており、中途もプロパーも分け隔てなく仕事を任されるという。

「風通しが良い、働きやすいと、中途でやってきた人にはしばしば言われますね」と森野氏。男女を問わず働きやすい職場づくりを目指し、法定以上の支援制度が構築されている。例えば、法律が規定する4週間の〝産後パパ育休〞に加えて20日の休暇が取得できるようにし、さらには、特別な理由がない限りその取得を必須とした。

KAMEIDO CLOCK/プラウドタワー亀戸クロス(東京都江東区/2022年)
約2万4000㎡超の敷地に25階建て934戸の集合住宅、5万8000㎡の商業施設、760㎡の保育所、隣接する江東区立小学校の増築棟まで含めた複合再開発。住宅棟においては、住戸全体を冷暖房・換気する「床チャンバー空調システム」をファミリータイプ770戸に採用。商業棟と住宅棟の間には横丁型のフードホール「カメクロ横丁」を設け、亀戸という地域が持つ下町情緒を継承した

「そういえば、オフィスカジュアルも、ゼネコンのなかでは先頭を切って取り入れたほうです。いまだに業界の会合に出席すると浮きますから(笑)。全般的に、若い人にとっては溶け込みやすい環境ではないかと思います」

最後にこれからの課題を尋ねると、森野氏は「BIMを活用したさらなる生産性の向上」を挙げた。

「前田建設の持株会社となったインフロニア・ホールディングスの岐部一誠CEOは、『〝デジタル技術による、建設業のルールチェンジ〞を目指す』としています。我々設計部門も例外ではありません。もちろん、これまで生産性向上のためにICTを駆使してきましたが、それだけでは足りません。そこで私たちはBIMを駆使しながら、長らく変わらなかった設計業務全体を変革しようとしているのです。さらには、設計と施工をシームレスにつなぎ、ゼネコンだからこそできる建設ビジネスの全体最適を目指したい。同時に人材配置の全体最適化も進めることになるでしょう。多様な職能を持った人材を抱え、その能力を引き出せるのも、〝ゼネコンの強み〞のはずですから」

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PROFILE

森野 聡

森野 聡
Satoshi Morino

前田建設工業
執行役員 建築事業本部 建築設計統括

1964年、和歌山県生まれ。90年、京都工芸繊維大学大学院修了後、
前田建設工業株式会社入社。2021年4月より、同社執行役員・建築設
計統括。再開発案件、民間ディベロッパーとの超高層マンションを中心
に、幅広い分野の住宅プロジェクトの設計を担当。海外プロジェクト、建
築家やデザイナーとのコラボレーションも多数。一級建築士。インテリア
プランナー。

前田建設工業株式会社

創業/1919年1月8日
代表者/代表取締役社長 前田操治
所在地/東京都千代田区富士見2-10-2
https://www.maeda.co.jp/

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