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我々が目指しているのは、「オープンBIM」の実現

我々が目指しているのは、「オープンBIM」の実現

一般社団法人 buildingSMART Japan 代表理事 山下純一

buildingSMART Japan(bSJ)の前身である「IAI(International Alliance for Interoperability)日本」ができたのは、1996年のことだ。IAIは、建設業界におけるデータの共有化及び相互運用を目的にしたアメリカ発祥の国際組織で、後にbuildingSMART International(bSI)となった。bSJは、その日本支部(26ある世界支部の一つ)という位置づけである。

現在の会員数は、建設会社、設計事務所、ITベンダーなどの法人を中心に約160。私は96年のスタート時より活動に参加し、2004年に任意団体から有限責任中間法人(現在は一般社団法人)となったタイミングで代表理事に就任し、現在も同職を務めさせていただいている。

我々が目指してきたことをひとことで表現すれば、「オープンBIM」の実現、ということになるだろう。建築の生産性向上などに寄与するBIMだが、プロジェクトを形成する企業同士で、それにかかわる情報共有がスムーズに行われなければ、本来のメリットを発揮できないと思われる。

実際には、ゼネコン、サブコン、設計事務所、建築部品メーカーなどが、それぞれの事情によって選択したBIMソフトウェアを使い、その間のデータ互換性が不十分であることから、設計、施工、保守管理という建築ライフサイクルの様々な場面で情報伝達に齟齬をきたし、非効率な作業過程をもたらしているのが実情といえる。単に図面を描くのではなく、場合によっては構造計算や積算、流体解析などにもデータを渡すBIMにとって、ソフト間の互換性の重要性、必要性は2次元CADの比ではないのだが、そうはなっていない現実があるのだ。

そうした問題を解決するために、bSIが策定し、その標準化に向けて活動しているのが、IFC(Industry Foundat ion Classes)だ。3次元CADとBMIの最大の違いは、建造物の幾何形状のみならず、材質などの属性データを保存できることにある。ただし、問題は、先に述べたように、例えばその形状と属性にどう連携を持たせるのか、といったスキーマ(データ構造)がソフトによってバラバラなことだ。IFCは、その構造に関する世界標準なのである。

このIFCに仲立ちさせることで、ソフトウェア上でのBIMデータの共有が可能になる。それぞれのソフトがIFCトランスレータを備えることにより、自らのデータ構造をIFCのデータ構造に変換して渡したり、逆にIFCで送られてきたデータを自分のソフト用に変換して使ったりすることができる。活動の甲斐あって、1 3 年、このI F Cは国 際 標 準 I S O(16739:2013)となった。実は、ISO(国際標準化機構)にも、この分野の標準化に関する作業部会があったのだが、議論には時間がかかっていた。世の中のスピード感とマッチしない状況を踏まえ、bSIがIFCの策定を進め、それをISOに持ち込んで標準化にこぎつけた、という経緯がある。

単に社内で便利な道具としてBIMを導入するというのではなく、サプライチェーン全体でスムーズに情報をやり取りできるBIMの標準を使って作業を効率化し、ひいては優れた建造物が増える社会にしたいというのが、我々の理念だ。その実現に向けた課題については、回を改めて述べて
みたい。

PROFILE

Junichi Yamashita

Junichi Yamashita
山下純一

1965年、名古屋工業大学建築学科卒業後、現株式会社フジタ入社。
情報システム部長、株式会社フジタビジネスシステム代表取締役社長などを経て、
2004年より現職。株式会社CIラボ代表取締役社長。
一級建築士。特殊情報処理技術者。

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