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寺院、個人宅、超高層ビル、都市開発まで、時代が要請する多様な建築を手がける。<br/>個の力を最大化しながら勝負する設計集団

寺院、個人宅、超高層ビル、都市開発まで、時代が要請する多様な建築を手がける。
個の力を最大化しながら勝負する設計集団

入江三宅設計事務所

時代が要請する建物をつくること――それが入江三宅設計事務所の誇りにして原点だ。

1947年、岐阜県で創業した当初は、繊維産地として知られた濃尾平野にある紡績工場を数多く設計。一方では、法隆寺の収蔵庫や鎌倉大仏の免震化など、文化財保護の案件でも実績を積んだ。

現在は、個人宅、超高層ビル、複合施設と多種多様なタイプの建築物を設計しながら、オフィスビルを主軸に置いている。アークヒルズ、御殿山ヒルズ、城山ヒルズ、六本木ヒルズなどのヒルズシリーズは、同社の設計である。加えて近年は中上級ホテルや、上海・北京・ヤンゴンを拠点とした海外プロジェクトも増加中だという。

所員は七十余名。企画から設計、監理までを手がける総合設計事務所にしては小所帯かもしれない。宮本良明所長によれば、それは創業者の一人である三宅晋氏の教えだという。

「『バス1台分の少数精鋭でいけ』という言葉を守っています。我々は、スキルを磨き続ける建築家の集団でいたい。さすがに今はバス1台というわけにはいきませんが(笑)、お互いの顔と名前が一致する規模感のまま、人の質を落とさずやっていきたいのです」

つまり、人こそが同社の強さ。プロジェクト制を敷き、特に若手にはジャンルもポジションも偏りなく経験させるのも「一人で何でもできる」建築家として育てるため。OJTを通じ、70年に及ぶ歴史のなかで培った同社の知見を惜しみなく伝えている。また半年に一度、所長自らが面談を行うことで社員の成長をフォローするのも特色の一つ。同じポジションで習熟を図るか、経験を広げるか。本人と会社のニーズを面談でマッチングさせるためだ。70人という規模なら、こうした密なコミュニケーションも可能。「バス1台分の規模でいけ」という創業者の教えは、そこに本質がある。

「どんどん経験させますし、どんな人間にもチャンスがある環境です。若手でも、いいアイデアがあればいきなり採用されるかもしれません。プロジェクトチームがそれをしっかりサポートします。私自身、入社2年目でリクルート銀座ビルの外観とエントランスを設計させてもらいましたから。『ちょっと大変だけど楽しかったな』と若手が思えるようなシーンをできるだけつくり、チャレンジできる職場にしたいと思っています」

経験豊富な個の力は、移り変わる時代のなかでも常に最大の武器だ。オフィスビルにしても「何を付加価値とするか」答えは一様ではないが、同社は〝最適解〞を提案し続けている。

「外観こそ様々ですが、オフィスビルの基本的な設計のバリエーションは出尽くした感があり、最近はともすると『とにかく大部屋』という話に落ち着いてしまう。しかしホテルや文化施設、病院と、様々な案件を手がけてきた人間がオフィスビルの設計にかかわることで生み出せる新しい価値があるはずです」

建築そのものを取り巻く環境も、この数年で劇的に変化した。ならば、建築設計事務所のあり方も以前と同じではいられない。
宮本所長が続ける。

「リモートワークができればオフィスはいらなくなる、空き家が800万戸あるから新築は減っていくといった話も出てくるなか、我々は何をするべきか。その建築の進化の果ての、さらに先を模索する努力はもちろん必要です。一方で、今私たちが海外拠点を置く中国、東南アジアなど、まだまだ建物が増えていく海外にこれまでの経験を生かしていく。この両軸で貢献していきたい」

とはいえ、冒頭に触れた経営の原点がブレることはない。時代が要請する建物をつくること。そのための個の力なのだ。そしてもう一つ、大切なものがある。

「三宅は『合目的性』という言葉をよく使いました。また私の2代前の社長は『信なくば建たず』と。社会とクライアントが建築に何を求めているのか十全に理解しなくては信頼は生まれず、信頼なくしていい建築はつくれない。私たちにとって最大の目標とは、その信頼を得ることなのです」

PROFILE

代表取締役所長 宮本良明

代表取締役所長 宮本良明

みやもと・よしあき

/1978年、早稲田大学理工学部建築学科卒業後、

入江三宅設計事務所入所。

94年、設計次長。2000年、設計部長。

03年、取締役設計部長。10年、代表取締役副所長。

13年より現職。

主な設計作品に、リクルート銀座ビル、アーク森ビル、

聖蹟桜ヶ丘ビュータワー、ミャンマー連邦共和国大使館など。

株式会社入江三宅設計事務所

所在地/東京都港区六本木6-7-6 六本木アネックス
TEL/03-5786-1911
http://www.imae.co.jp/
1947年、岐阜県にて「ナガラ建築事務所」を設立。所
長は東京帝国大学建築学科出身の入江雄太郎。63
年、入江の大学の後輩でもある三宅晋が事務所代表
に就任。事務所名を入江三宅設計事務所に改称した。

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