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施主の思いをしっかりと受け止め、期待を超える“解”を提案・実現。地域からも喜ばれる建築を目指す

施主の思いをしっかりと受け止め、期待を超える“解”を提案・実現。地域からも喜ばれる建築を目指す

アーキヴィジョン広谷スタジオ

アーキヴィジョン広谷スタジオ代表の広谷純弘氏、副所長の石田有作氏は共に、戸尾任宏氏が創設した建築研究所アーキヴィジョンの出身。独立後も、二人三脚で現在の事務所の運営を続けている。

住宅、保育園、ホテル、オフィス、工場、神社仏閣と、小規模な事務所にもかかわらずビルディングタイプが多彩なのは「そのほうが楽しいから」(広谷氏)。仕事の基本は、クライアントと対話を重ねながらデザインの方向性を見つけていくスタイル。「いろいろなデザインの作品がありますけど、お客さまと話をしているうちにそこに落ち着いたというだけ。形にこだわりはない」と広谷氏は言う。

「ハードの設計だけで終わらせず、ソフトのほうにも踏み込みたいというか。保育園の設計を依頼された時には『園の存在意義とは』など、施主としっかり話し合います」(石田氏)

複数手がけている保育園やこども園にしても、一つとして同じ形の建物はない。例えば「レイモンド花畑保育園」は緑豊かな公園を保育環境に取り込みつつ、森のために暗く陰っていた周辺地域を明るく照らす役割を担っている。

「いつも思うのは、施主からの与条件とは別に、自分たちに解決できる問題があるんじゃないか、ということ。それがクリアできれば自ずと形も決まる。その問題を見つけるためにも、施主とのコミュニケーションは何より大事ですね」(広谷氏)

仕事は知人やクライアントから紹介されるケースが多いというが、偶然や巡り合わせが運んでくることも。「たまたま飛行機で隣り合った人が関係者で」富山県内のコミュニティセンターのプロジェクトを3件担当した。そこで開いたアートイベントを訪れていたのが、鋳物メーカーの社長だった。株式会社能作の新社屋兼新工場はこんな縁から生まれた。

「建て替え前の工場は、すごく味のある空間でした。これをピカピカに新しくしてしまったら、ものづくりの現場に来た感じがしない。そこで鋳物をつくる木型を収納する倉庫をガラス張りにして、エントランス入ってすぐのところにレイアウトしました。ものづくりの現場の臨場感をしっかり感じてもらえると思います」(広谷氏)

広谷氏は今後も仕事の幅が広がっていくことを望んでいる。「一つのビルディングタイプに特化するメリットもありますが、定石を踏むことばかりになってはつまらないなと」

建築のみならず、イベント企画を積極的に手がけるのもそうした理由から。和歌山県の「紀の国トレイナート」は、紀伊半島の海沿いを走るJRきのくに線を舞台にしたアートイベント。アーティストが駅舎で制作したアートを電車で巡るという趣向だ。広谷氏は、紀州材による積み木で茶室を建てたり、レイモンドこども園の協力のもと列車1両を「動く保育園」にして地域を盛り立てた。

「活動範囲を広くしておけば、自然とPRできる質・量が多くなります。もちろん、人間関係もそうです。僕らのつくった建物を見て声をかけてくれる人もいれば、イベント活動を見てきてくれる人もいる。そういう事務所です」(広谷氏)

「建築の面白みの一つは、いろんな人と出会えること」と石田氏も口を揃える。その考えを反映してか、事務所で働くメンバーのバックボーンも様々だ。

「人生の寄り道をしてきた人が多いですね(笑)。市役所の土木課出身者や、夜間大学で学びながら働いている者もいる。育児をしながら10時〜17時で働いてもらっている女性もいます。こうしたバックボーンの違いも、仕事に深みをもたらしていると思っています」(石田氏)

かかわる人間が多様であるほどアーキヴィジョンが生み出す作品も多様になる、ということだろう。「次につくってみたいものは?」と広谷氏に尋ねると、「海が見えるコンサートホール」という答えが返ってきた。

「湿気があるからとんでもないとバイオリニストには言われましたが、崖の上なら何とか。実はすでに、ぴったりの場所を見つけてあるんですよ(笑)」

PROFILE

アーキヴィジョン広谷スタジオ

アーキヴィジョン広谷スタジオ

所在地/東京都新宿区下落合3-17-42

ミネルヴァ学園2号館3階

TEL/03-5996-0323

http://archivision-hs.co.jp/

東京だけでなく地方都市でも活躍の場を広げる建築設計事務所。

最新作の「能作新社屋・新工場」でDSA空間デザイン賞受賞。

ほか、公共建築賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞など受賞多数。

広谷純弘(ひろたに・よしひろ)

1980年、東京理科大学工学部建築学科卒業後、

建築研究所アーキヴィジョン入社。

95年、同社副所長。

2006年、アーキヴィジョン広谷スタジオ設立。

同社代表取締役、和歌山大学客員教授、

東京理科大学非常勤講師。一級建築士。

石田有作(いしだ・ゆうさく)

1992年、武蔵工業大学建築学科卒業。

94年、武蔵工業大学大学院修士課程修了。

96年、建築研究所アーキヴィジョン入社。

2006年、アーキヴィジョン広谷スタジオ設立。

取締役副所長、東京都市大学非常勤講師。一級建築士。

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