アーキテクト・エージェンシーがお送りする建築最先端マガジン

Architect's magazine

MAGAZINE TOP > > 株式会社竹中工務店

誰も見たことのない美しい景色をつくりたかった。知恵と新技術を詰め込んだ、大阪の新たなランドマーク

誰も見たことのない美しい景色をつくりたかった。知恵と新技術を詰め込んだ、大阪の新たなランドマーク

株式会社竹中工務店

超高層集密都市――。地上300mの高さを誇る「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)は、「ビル」でも「高層建築」でもなく、そう呼ばれることがある。いくつかの建物が組み合わさったような外観は、「超高層といえば対称形」の概念も吹き飛ばす。だがそこには、「そのカタチでなければならない」理由があった。今回は、計画スタートからおよそ7年間にわたってこのプロジェクトに携わった、竹中工務店設計部のメンバー4名にご登場いただこう。

阿倍野、そして大阪への思いを“超高層”に込めて

これだけ長きにわたった大プロジェクトである。「これは!」というビンチに見舞われたことも、あったはず。「よく聞かれますが、ほとんど覚えてないですね。プロジェクトに携わるメンバーが力を合わせれば大抵のことは乗り越えられると信じることです」と原田氏は笑う。

「プロジェクトマネージャーとして留意したのは、様々な課題に対し臨機応変に対応するとともに、建物の理念、根幹にかかわる部分について、ブレないことです。そこがぐらつくと、周囲が慌ててしまいますから。チームのベクトルを合わせていくことが大切で、方向性と同時に、プロジェクトの勢いを止めないことがポイント。振り返ると7年間はあっという間でしたね」

“ベクトル”の中には、建物の名称にもなっている阿倍野・天王寺地区に対我々の夢でした。建物は、『建てばおしまい』ではありません。都市を具現する、深い思いもあった。「阿倍野は、大阪平野の背骨と言われる上町大地にあって、古い寺院や大阪城などが連なる歴史文化の中心地です。繁華街と人情味ある商店街、親密な住宅地が交わり、交通の要衝でもある。にもかかわらず、商業開発ではキタ、ミナミに比べ地盤沈下が指摘されてもいます。ここに超高層集密都市という新たな価値を構築し、ひいては大阪全体の活性化に貢献したい、というのが我々の夢でした。建物は、『建てばおしまい』ではありません。都市を具現化したランドマークが成長を繰り返すことで、必ずその役割を担っていってくれるだろう、と期待しています」

最後に、それぞれの“これから”を語ってもらった。「構造にしろデザインにしろ、100年、200年残ることを見とおして設計しました。ただ、今まで設備の設計にそうした長いタイムレンジの発想があったかといえば、正直弱さがあったことに、今回気づかされました。設備に対する社会的な要請が将来どうなっていくのかという視点に立てば、考えるべきことは際限なくある。それを楽しみながら仕事をしていきたい、と考えています」(坂口氏)

「“立体都市”という話が出ましたけど、実際、17階の屋外庭園は、近所のお年寄りの散歩コースになっているそうです。建築には、大小にかかわらず何かしらそういう公共的な、“開いた”部分が必要だと思う。そのことを、今まで以上に認識しながら、デザインに取り組みたいですね」(米津氏)

「普通、構造は陰に隠れていることが多いですが、今回、見られる喜びに目覚めました(笑)。学生を現地に案内すると、みんな目を輝かせてくれます一見地味だけど、『この空間を生み出しているのは紛れもなく構造なんだ!』という気持ちを伝え、一人でも多くの若者にこの分野を目指してほしいです」(平川氏)

「今、郊外の駅前再開発ビルの再開発というテーマに取り組んでいます。今後も、都市と建築の両方に軸足を置いたプロジェクトにかかわっていきたいこの仕事をしていて一番わくわくするのは、誰も見たことがない景色をつくれることです。どんなにメディアが発達しようとも、建築の現場ではリアルな体験ができる。この楽しさを若い世代の人たちに伝えていくことも、僕らの仕事だと思っています」(原田氏)

ページ: 1 2 3

PROFILE

株式会社竹中工務店
創立 1899年2月
代表者 宮下正裕
所在地 大阪府大阪市中央区本町4-1-13

http://www.takenaka.co.jp/

人気のある記事

アーキテクツマガジンは、建築設計業界で働くみなさまの
キャリアアップをサポートするアーキテクト・エージェンシーが運営しています。

  • アーキテクトエージェンシー

ページトップへ