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事業継承における具体的な課題は「人」「お金」「取引先」|2代目社長の経営課題

事業継承における具体的な課題は「人」「お金」「取引先」|2代目社長の経営課題

直面する5つの壁 問題と解決

建設業界では、経営者交代が単なる世代交代で終わらないケースが多い。案件選別、人材育成、評価制度、対外的信用、企業文化ー。2代目社長のもとで顕在化する課題は、個人の資質ではなく構造の問題である。

建設業界における事業承継は、社長が交代すれば完了するほど単純なものではない。むしろ経営者が変わった直後から、これまで表面化していなかった課題が一気に顕在化するケースも多い。とりわけ中小企業では、創業者の経験や人脈、判断力に依存してきた経営構造そのものが、承継期に大きな負荷となる。

例えば、仕事量を優先するあまり、利益率や現場負荷を十分に考慮できず、忙しいにもかかわらず利益が残らない状態に陥ることがある。これは現場の努力不足ではなく、案件を取る・断るという判断基準が整理されていない経営上の問題だ。また、忙しさを理由に育成が後回しにされ、業務が一部のベテランに集中する構造も見逃せない。若手は経験を積めないまま離職し、
人手不足はさらに深刻化していく。


  問題点【1】 案件を断れない「経営判断」

世代交代後に最初に表面化しやすいのが、「仕事はあるのに利益が残らない」という状態だ。背景にあるのは、案件を取る・断る判断基準の不在である。創業者時代は経験と勘で取捨選択されていた仕事が、引き継ぎ後は断れずに積み上がる。結果として現場は疲弊し、原価管理は甘くなり、利益率は下がる。忙しいのに会社が強くならない。この矛盾は現場努力の問題ではなく、経営判断の設計不足に起因している。

  問題点【2】 現場が次の人材を「育てられない」

人手不足の本質は、人数の問題ではなく社内の組織構造にある。忙しい現場ほど育成より即戦力が優先され、仕事は一部のベテランに集中する。若手は補助業務のまま経験を積めず、成長実感を得られないまま数年で離職する。この循環が続く限り、採用を増やしても現場は楽にならない。人が育たない会社は、いずれ現場が回らなくなる。育成は余裕ができてからではなく、経営として意図的に社内環境に組み込む必要がある。


利益と評価が結びつかない組織では、社員は何を目指して働けばよいのか分からなくなる。工期遵守や原価管理、後輩育成といった成果が可視化されなければ、責任ある仕事を避ける空気が生まれ、組織全体の生産性は低下する。評価制度は人事施策ではなく、経営の意思を組織に伝えるための重要な装置である。

承継期には、社外からの見られ方も大きく変化する。元請、発注者、金融機関、行政といった関係者は、会社の実績だけでなく、誰が代表として責任を負っているのかを注視している。対応を誤れば、信用低下や受注機会の減少に直結しかねない。


  問題点【3】 利益と評価が「繋がらない」

創業者が社内評価制度を仕組み化していない場合、現場で利益を出しても、それが個人の評価や処遇に結びつかない会社は少なくない。工期を守ったのか、原価を抑えたのか、部下を育てたのか。こうした成果が曖昧なままでは、社員は「何を頑張ればよいのか」を見失う。結果として責任ある仕事を避ける空気が生まれ、組織全体の生産性は下がる。評価制度は社員管理のための仕組みではなく、利益構造を社員と共有するための装置。

  問題点【4】 代表承継で「信用が揺らぐ」

建設業では、創業者から2代目社長への交代は社内の話だけでは完結しない。元請、発注者、金融機関、行政といった社外の関係者は、会社の規模や実績だけでなく、「誰が代表を務めているのか」という点も重視している。承継時の説明不足や制度対応の遅れは、信用低下に直結する。現場体制が変わっていなくても、仕事量が減るケースは珍しくない。事業承継は経営課題であると同時に、対外的な信用をどう設計するかというテーマでもある。


そして最後に問われるのが、創業時から培われてきた価値や強みである。それが言語化されないままでは、社員や次世代は判断基準を持てず、会社の軸は揺らぐ。求められているのは創業者を否定することではなく、過去の価値を整理し、次の時代に通用する形へと再設計する視点だ。これら五つの壁をどう乗り越えるかが、承継後の成長を左右する分岐点となる。


  問題点【5】 創業の強みが「言語化」されない

「この会社が長年選ばれてきた理由は何か。」創業者は感覚的に理解していても、その価値が言葉として整理されていない中小企業は少なくない。その結果、経営者交代を機に社員や次世代は判断基準を失い、会社の軸が揺らぎ始める。変えるべきは手法や体制であり、失ってはならないのは創業時から培われてきた価値や強みである。それらを言語化し、組織内で共有できなければ、承継は単なる世代交代にとどまり、競争力は次第に失われていく。


事業継承における具体的な課題は「人」「お金」「取引先」

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次の社長が、事業を再起動する。

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