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多様な職能が交じり合い新たなアイデアが生まれる。変貌する社会の未来を見据え、“人が集まる場所”をデザイン

多様な職能が交じり合い新たなアイデアが生まれる。変貌する社会の未来を見据え、“人が集まる場所”をデザイン

株式会社リライトデベロップメント

2014年月、JR中央線の高架下に新しい“公共圏”が誕生。リライトデベロップメントが設計を手がけた商業施設「コミュニティステーション東小金井(以下コミステ)」である。同社のビジョンはハード・ソフトの両面から新しい公共性を社会に示すこと。この実現のため同社代表・籾山真人氏は、異なる専門性を持ったメンバーとの協働という道を選択。13年にメジロスタジオがリライトデベロップメントに合流するなど、様々な組織改編を進めてきた。今回、話を聞いたのは籾山氏と、元メジロスタジオ代表、現リライトデベロップメント取締役の古澤大輔氏。まずは二人の邂逅までを辿ろう。

“課外活動”で協働による街づくりの可能性を確信

「リライト」の名を冠する会社は、現在3社。企画・マーケティングを手がけるリライトに、建築・不動産事業のリライトデベロップメント、紙媒体・Webなどの編集を担うリライトダブリューだ。各社の取締役にはそれぞれ、酒井博基氏、古澤氏、井上健太郎氏が就く。「彼らはもともとピンで仕事をしていた専門家たち。それが僕に騙されて巻き込まれた」と笑うのが、3社の代表取締役を務める籾山氏だ。
酒井氏は大学院修了後すぐにデザイン事務所を、古澤氏は建築設計事務所メジロスタジオを創業。井上氏は編集プロダクション勤務を経て、フリーのエディターに。そして籾山氏は大学で都市(社会工学)を学んだが、アクセンチュアに就職している。「いずれ街づくりを仕事に」と見定めたうえの計画的なキャリアステップだった。

僕は民間サイドから街づくりに携わりたかった

「僕は民間サイドから街づくりに携わりたかった。それには会社を経営する力、俯瞰してものを見る力が必要だと考え、経営コンサルティングファームに入社しました」籾山氏と古澤氏は中高時代の同級生でもある。籾山氏がリライトを起業する少し前二人は偶然再会した。「でも、当時は特段仲がよいわけではなかった(笑)」という彼らが手を組む必然は、どこにあったのか。まず籾山氏の談。「コンサルタントは、専門性を持った人たちと組んでクライアントの“お悩み解決”をするわけですが、実行段階まではお手伝いできない。このジレンマを解消するには、自分の組織と、協働する専門家の存在が不可欠でした」

一方の古澤氏は、そんな籾山氏に「近いマインドを感じた」と述懐する。「メジロスタジオは建築家3人によるユニットでした。一人の強い個性のもとにスタッフを集めるのではなく、異なる価値観を持つ建築家が生み出す強みを発揮させることが狙い。そうすれば新しいクリエイティブを発揮できるし、複雑化した建築を取り巻く環境にもアプローチしやすいと考えた。ただ、そうはいっても同業の集まり。さらに他者性を実装するには専門性の異なる人と組むのがいいのでは?と考え始めた矢先、籾山と再会したわけです」ほどなくして、コミュニティFMラジオを活用したプロジェクトと、商店街の空き店舗を活用したプロジェクトなど、仕事ともいえない“課外活動”が二人の地元、立川で始まった。実は、そのプロジェクトの立ち上げに酒井氏、井上氏もかかわっていた。

この活動を通じ、4人は互いに協働する価値を共有するようになる。まずは10年に、空き店舗再生プロジェクトを共同実施するため、古澤氏がリライトの取締役に。11年、酒井氏が経営するデザイン事務所をリライトと統合するタイミングで、不動産・建築部門としてリライトデベロップメントを分社化。また、12年には、井上氏が加わるかたちでリライトダブリューを新設。そして13年に、メジロスタジオのスタッフたちも合流した。

「対外的な見え方も意識しました」と籾山氏が補足する。「特に考慮したのは、クライアントとの信頼関係です。僕たちが違う立場で仕事を融通し合っているように見られるのはよくないでしょ。“リライト”という一つの枠があるほうが、わかりやすいですよね」。

マガジン創刊からスタートしたJR高架下の商業施設

マガジン創刊からスタートしたJR高架下の商業施設

結果、4人の専門家が、リライトのもとに集まり、グループの照準を「街づくり」に合わせることになった。同社が手がける案件は商業施設が7、8割を占めるが、籾山氏は商業施設を“現代的な意味でのパブリックスペース”と捉える。コミステを例に、リライトと街とのかかわり方を見ていこう。

JR東小金井駅高架下の店舗群コミステは、JR東日本の戦略子会社であるJR中央ラインモールから依頼を受け、リライトが企画立案から事業計画、設計、開業後の運営までを担っている。
声がかかったのは11年。その内容は「中央線の高架下に生まれた新たなスペースの有効活用。中央線の沿線価値向上のため地域を巻き込みたい。どんなアプローチがあり得るのか」。

このお題に対してリライトは、開業2年前から始まる3つのステップを提案。第1ステップは、エリアマガジン『ののわ』の創刊だ。沿線在住のキーマンを誌面に登場させ、地域の魅力を発信した。次に、同誌に登場したキーマンらと月1回のトークイベントを開催し、地域のアーリーアダプターたちをつなげた。ここまでは、いわばコミュニティの醸成期間。第3のステップは、コミュニティの受け皿になる具体的な場をつくること。これがすなわち、コミステである。地域コミュニティの受け皿であるからには、テナントもそれにふさわしいものでなければならない。現在は、革細工職人、ペットグッズのセレクトショップ、シルクスクリーン作家など、「地域の個人事業主」たちが軒を連ねる。籾山氏が「計画段階から口を酸っぱくしてクライアントに説明していた」のがこの点だ。

「JRの商業施設にはナショナルチェーンが入居するのが基本でした。でも、それではコミステは意味を失う。だからテナント誘致スキームも、地域の個人が前提。また、開業資金を抑えられるよう、徐々に適正価格にアップする段階家賃を設定しています」
建築の計画においても、「コストをかけず、いかに立体的な場をしつらえるか」が検討された。店舗の躯体にコンテナを活用したのもそのためだ。ファサードには鉄骨フレーム用いて、建物と遊歩道をゆるやかに仕切っている。設計を担当した古澤氏は言う。

「クライアントから予算を下げろと言われることはありますが、このプロジェクトの場合は逆(笑)。地域の個人事業主の出店リスクを抑えるために、設計、建築にかけるコストも下げなければいけないなど、私たち自身がクライアントを説得したうえで実現したローコストです。その点も新しかった」開業後は空きスペースでマルシェ(青空市)なども開催。またリライト自身もJR中央ラインモールとテナント契約し、全国各地のフリーペーパーを集めた「ヒガコプレイス」を運営中だ。そうやって彼らは現在も、コミュニティのとりまとめ役を任じている。

「非作家的な作家性」。この思想を武器に新たな公共圏をつくる

「非作家的な作家性」。この思想を武器に新たな公共圏をつくる

社会に“新たな公共の場”を提案するために集まった4人の狙いの正しさは、コミステの成功でひとまず証明されたようだ。かつて建築事務所の仕事は、個人宅から始まって、集合住宅、複合施設と進み、公共施設を担当するのがゴールとされた。「一緒になったメジロスタジオも、ある時までは、この“建築スゴロク”を順当に進んでいた」と籾山氏は言う。

「でも、僕らの世代はどこかで大きなジャンプアップがないと、公共施設にたどりつけない。また一方で、景気のいい時代にバンバン建てられたような公共施設をまだつくるのかという反省もある。今どんな公共施設が求められるのか自分たちで考え、生み出していく使命を込めて、『新しい公共性を示す』というビジョンを掲げています。これは個人事務所の延長では実現できません。特に、コミステのような規模のプロジェクトになると、合意形成のプロセスが複雑になり、求められる経済合理性もデザイン性も変わる。これからますます、僕たちが一つのグループに集結した意味が明確になっていくことを、楽しみにしているのです」古澤氏が後を続ける。

「公共建築の問題は、コンペやプロポーザルの前段階で『この敷地に、こんな機能をつくる』という条件がすでに設定されてしまっていること。その条件はなぜ必要か?という根源的な疑問の声が反映されづらい構図になっている。でも、リライトには企画段階から関与できる仕組みがあるし、コミステで実際にそれを実現したわけです。コミステは民間企業による商業施設ですが、企画から現場まで一貫して関与することで、周辺地域の方々に喜ばれる公共性を持った場づくりができることを実証したプロジェクトでした」「これからも公共性を帯びた場所づくりにかかわりたい」と籾山氏。3社それぞれの専門能力を伸ばしながら、さらに進化できる組織の在り方を模索していくという。異なる専門性の交わりからイノベーションが生まれることは多いが、「多様な専門家を同じ箱に入れさえすればイノベーションが起きるのか」という問いもついて回る。

我々は「専門性ごとに別法人、独立採算」をその問いへの答えとした。

我々は「専門性ごとに別法人、独立採算」をその問いへの答えとした。「独立採算にしなければ自己批判回路が機能しない」と古澤氏。籾山氏も「なあなあの関係性を排除したかった」と明快だ。つまり3社を依存関係にしないための独立採算である。従って、お互い何かの業務を依頼する時は、必ず対価=金銭が発生する。

もう一つの答えは、ビジョン、ベクトルを合わせること。籾山氏は「我々4人は専門がバラバラだけど、大きな共通点がある」という。「もともと皆、いい意味で“こだわりがない”(笑)。一般的に、クリエイターは、作家性を持ちたがるけど、それがないのです。古澤は『非作家的な作家性がある。非作家的であることが実は作家的』と説明するのですが、僕たちの最大の強みは、きっとそこにある。それぞれの専門能力を研ぎ澄ませながらも、世の中のニーズに柔軟に対応していく。そうして自分たちの〝非作品的な作品〞づくりにこだわりつつ、クライアントとともに社会が求める、新しいかたちの公共の場を提案していく。それが僕らのチームが持つべき正しい“作家性”なのだと思っています」

PROFILE

株式会社 リライトデベロップメント
設立  2008年8月(11年5月に改組)
 ※メジロスタジオ創業は2002年9月
代表者  籾山真人
所在地  東京都新宿区大京町29 作道ビル4階
所在地

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