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力学原理に基づく建築構造に、合理的無駄を”遊び”として追加。長い歴史と先端技術から”解”を導く

力学原理に基づく建築構造に、合理的無駄を”遊び”として追加。長い歴史と先端技術から”解”を導く

法政大学 デザイン工学部 建築学科 構造計画研究室 浜田研究室

両極に広がる研究を建物に収斂させる

浜田氏は、人間の直感に着目することがブレイクスルーになると考えた。人間には全体を瞬時に俯瞰するバランス感覚があり、想定外なことが起きた時の余裕を含めて構築できる。

「リダンダンシー(冗長性)という言葉を、合理的な無駄と解釈しています。歴史的な建築物を調べると、そういった構造の合理的な無駄をデザインに昇華した例が見つかります」

例えばゴシック建築の特色であるピナクルは、単なる装飾ではなく、荷重をかけて構造物を安定させる役割を担っている。アイアンブリッジの両脇にあるリングも構造の重要なピースだ。

「力学的な部材でありながら、意匠的に意味のあるものをつくり出すことはAIには不可能。遊びは人間独特の感性なのです」

■注目の研究

高池葉子氏と協働したムサシ電子板橋工場で、CLTパネルの構造的効果を検証するために、パネル設置前と後、
および施工時に学生15人(荷重約1t)が一斉にジャンプし建物常時微動観測を行った。
観測データから建物全体の固有振動と減衰定数を推定できる<

 かつて構造家の坪井善勝氏が言った言葉、「美は構造的合理性の近傍にある」の〝近傍〞こそ、リダンダンシーに通ずると浜田氏は考えている。

現在は様々な建築家と協働して新たな構造形態を模索中だ。磯崎新氏と中国で進めるプロジェクトは生物の形態を構造に応用するバイオミミクリーの手法を取り入れ、高池葉子氏と設計したムサシ電子板橋工場では、一般利用がスタートしたばかりのCLTパネルと鉄骨のハイブリッド構造に挑んだ。

「コンピュータ利用と歴史的探求という両極端に研究が広がり、今は正直混沌としてます(笑)。佐々木先生のもとでは、先生が温めてきた考えを実際の建築で見事に応用してこられた姿に触れさせていただきました。私もリダンダンシーなどのキーワードをもとに研究を収斂させ、それがパシッとはまる設計ができることを目指しています」

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PROFILE

準教授 博士(工学) 浜田英明

準教授 博士(工学) 浜田英明

準教授 博士(工学)はまだ・ひであき
2004年、名古屋大学工学部社会環境工学科卒業。
06年、佐々木睦朗構造計画研究所勤務(~13年)。
11年、名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。
13年、法政大学デザイン工学部建築学科専任講師。
17年より現職。
共著に『建築形態と力学的感性』(日本建築学会)。
構造設計一級建築士。

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