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植物を育てるように都市を育てたい。</br>アルゴリズミックデザインの思想を軸に、新たな建築手法・概念の創出を目指す

植物を育てるように都市を育てたい。
アルゴリズミックデザインの思想を軸に、新たな建築手法・概念の創出を目指す

慶應義塾大学環境情報学部 松川研究室

人の手を使わずに設計を完了する

「アルゴリズミックデザイン」というデザイン手法を説明する際、松川昌平准教授は「植物を育てるように建築を育てること」という話をする。樹木は多様な形をしているが、すべて一本の幹から枝分かれを繰り返す単純な成長ルールが根本にある。そのうえで、環境に適合するために個々の形を変化させながら、生存および存続に優位な形質を次の世代に遺伝していく。

 

「この仕組みを応用して建築の新たなデザイン手法を開発することが、当研究室が掲げている大きな問いです」

単純な仕組みで形を〝生成〞した後に、あらゆる基準で〝評価〞し、高評価のものをかけ合わせて〝進化〞を繰り返せば、環境に適合したデザインが生まれるはずだと考えたわけだ。その思想をもとに椅子や鉄塔のデザインで応用実験を進めた後、「ARKHITEKTOME(アルキテクトーム)」として住宅設計への実用実験に踏み出した。これまで建築家の経験値で決定されてきた間取りやプランニングだが、様々な条件をコンピュータにインプットすれば自動〝生成〞できるシステムを開発。平面図とともに、構造図やパースなどでさえも人間が線一本引くことなく、寸法や注釈の記入までをすべて作成してくれるのだ。

次の段階として、コンピュータ上に再現した仮想住宅内での快適さを観測することで建築の〝評価〞を進めてきた。

「空間の快適さを表す指標を、視線や動線などの項目ごとに数値化して評価します。この指標が有効であることは、有名建築家作の既存建築同じ手法を使って解析した時に、感覚的につけた予想値とほぼ近くなる結果を得て立証しました」

構造的に強く、空間構成を豊かに、などの希望に従い評価の重みづけをすれば、生成した多き出し〝進化〞させられる。

「将来的には、植物を育てるのと同じような感覚で、施主自身がコンピュータを使って住宅を設計できるアプリに昇華させたいですね。パラメータを操作しながら試行錯誤を繰り返すことは、住宅のプランニングと同時に自分が欲する住宅基準の再認識につながるはずです」

この仕組みが完成すれば、設計から各種図面作成、構造計算、法規チェック、見積もり、工場でのプレカット依頼など、施工前までの全工程が自動化される。

もしも近い将来、このシステムが世に受け入れられたとしたら、建築家がやるべき仕事はどこに残されているのだろうか。

「建築家の仕事は大きく二分されるのではないでしょうか。一方はそのシステムに枠組みを与える人、つまり〝形〞ではなく〝型〞をつくる人。もう一方は、進化し続ける枠組みに追いつかれず、常にその枠の外に出ようとする人。想像力さえあれば、アナログ的に建築をつくってきた建築家であっても、枠の外に出ることは可能だと思います」

【次ページ】
生成システムにより風土に合った都市を

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PROFILE

松川昌平

松川昌平

まつかわ・しょうへい
1998年、東京理科大学工学部建築学科卒業。
99年、000studio(ゼロスタジオ)設立。
2009年、文化庁派遣芸術家在外研修員および客員研究員として
ハーバード大学GSD在籍(~11年)。
12年、慶應義塾大学環境情報学部専任講師。14年より現職。
共著に『設計の設計』(INAX出版)、
訳書に『アルゴリズミック・アーキテクチュア』(彰国社)など。

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