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銀座三越というハイブランドに適した、“三方よし”のイタリアンレストラン。カタチにしたのは登録女性デザイナー

銀座三越というハイブランドに適した、“三方よし”のイタリアンレストラン。カタチにしたのは登録女性デザイナー

Italiana Tavola D’oro 1996

クリーク・アンド・リバー社(C&R社)は、同社に登録した設計事務所や建築士と建築プロジェクトのマッチングを図り、双方の価値最大化を目指すプロデュース事業を展開している。この仕組みを活用し、2019年2月13日、東京の銀座三越11階レストランフロアに「Italiana Tavola D’oro 1996」がオープン。本物件を担当した建築デザイナーの笠原英里子氏とC&R社建築グループの松葉力氏に、本プロジェクトの経緯と成果を聞いた。

初の百貨店出店でプロへの依頼に変更

施主のメティウスフーズは、東京都内のオフィスエリアに、ビジネスパーソン向けのイタリアンレストランを展開している企業だ。代表の松澤俊氏は料理人出身であるが、内装への関心が高く、自らデザイン・ディレクションを行っていた。しかし、女性客が大半という客層が異なる銀座三越への出店が決まり、初のケースとして建築デザイナーの選定をC&R社に依頼。「優れたクリエイターを多数登録している点をご評価いただいた」と松葉氏。

「既成概念にとらわれたくないという施主からは、細かなデザインに関する要望はほぼなく、生産者にこだわる〝山、海、畑〞の〝三方よし〞という店のコンセプトを伝えられただけでした。そこで、ブライダル施設やアパレルショップなど、女性向け空間の実績が豊富な笠原氏を含むタイプの異なる3名を選びました」(松葉氏)。一方、施主側も独自で3社のデザイン会社に提案を要請し、合計4社の提案から選ぶカタチとなった。

 

オープンなつくりと柔らかい雰囲気

笠原氏は、メティウスフーズの従来の路線を踏襲した案、〝三方よし〞を色で表現した案など3つの提案を用意。採用案は、入り口部分にピザ窯を囲むカタチで大きなカーブのカウンター席を設けた、オープンなつくり。壁や床に木を多用し、温かく柔らかい雰囲気を演出した。本デザインのポイントについて笠原氏は次のように説明する。

「店はフロアの最奥部、しかも手前側に大きな防火扉があって入り口が視認されづらい。女性は一人でも入りやすい、安心できる店を選ぶもの。そこで、店内が見えやすく、オープンで明るい雰囲気をつくることを狙いました」

コンセプトの〝三方よし〞は、壁面に三角形をあしらって表現。基本的な素材は木や石など、自然の物だけで構成し、良質な天然食材にこだわる店のコンセプトに呼応させた。

店内画像

“三方よし”をコンセプトとした三角形のデザインテーマにより、間接照明をちりばめた温かく奥行きのある空間が実現した


メティウスフーズでの選定にはスタッフも加わり、実は黒を基調とした別デザインが支持されたという。決定しかかったが、迷った松澤氏は再度銀座三越の前テナントであるイタリアンレストランに足を運ぶ。「そこで、改めて女性客中心であることを再確認し、笠原氏の案のほうがマッチすると判断されたようだ」と松葉氏。

本プロジェクトでは、百貨店側の意向も聞き入れる必要性が生じ、C&R社が工事管理に関する様々な交渉も担当した。営業時間外を使った施工のため、通常の路面店に比べて倍近い工期を要したが、予定どおりに工事を完了。オープン直後から来店客の入りは好調で、施主や銀座三越側からも上々の評価が寄せられているという。

「C&R社さんとは、今回が初めての仕事でした。デザインは自分一人で行いますが、途中で誰かの意見が欲しくなるもの。そんな時に中立的な立場で参考意見やアドバイスをもらえ、とても助かりました」と、笠原氏はプロデュース事業のメリットを語ってくれた。

PROFILE

笠原英里子

笠原英里子
かさはら・えりこ

1989年、桑沢デザイン研究所スペースデザイン科卒業後、
近藤康夫デザイン事務所入社。
99年、カサハラデザインワーク設立。
2007年、株式会社カサハラデザインワークとして法人化。
イテリアデザインをメインに、建築、プロダクトなど、人とモノ、
人と人とのかかわりを考える空間デザインを手がけている。

クライアントの声

株式会社メティウスフーズ
代表取締役 松澤 俊

依頼に際しては、当社初の百貨店への出店ということで、あえて内装デザインに関する細かな要望は申し上げませんでした。結果、各社からまったく異なる案が出され、その中から笠原さんの案に決めたわけですが、自分では考えられなかった女性客向きのデザインは大正解。売上計画をかなり高めに設定していますが、おかげさまでそれをクリアするペースです。
今回、複数のデザイナーの提案から選ぶ成功法則を掴めたように思います。また、C&R社さんには百貨店との間に立ってもらい、様々な交渉、アドバイスをしてもらえたことも大きかった。次の店舗も同様にC&R社さんにお願いしたのですが、実は再び笠原さんの案を採用。来年のオープンを楽しみにしています。

物件概要

物件名/イタリアーナ・ターヴォラ・ドォーロ 1996
所在地/東京都中央区銀座4-6-16 銀座三越11階
施主/株式会社メティウスフーズ
竣工/2019年2月
企画・プロデュース/株式会社クリーク・アンド・リバー社
設計/株式会社カサハラデザインワーク
施工/株式会社VIDA Corporation
撮影/Nacása & Partners Inc.(店舗)、内海明啓(人物)

お問い合わせ

クリーク・アンド・リバー社 建築グループ プロデュースチーム
TEL/0800-170-0091(フリーコール)
MAIL/info@arc-agency.jp
URL/https://www.arc-agency.jp/

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