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既成概念の先にある新たな価値観を求め、</br>”一本の線”をひく

既成概念の先にある新たな価値観を求め、
”一本の線”をひく

鬼木孝一郎

建築に正解はない。そこにはまった!

東京で生まれた鬼木孝一郎氏は、父親の仕事の関係で小学校2年から中学校2年までの6年間をイギリスのニューカッスルで暮らした。帰国後に入学した早稲田大学高等学院で運命の出会いが。後にnendoを設立する佐藤オオキ氏だ。ともにボート部に所属して3年間を過ごし、鬼木氏と佐藤氏は早稲田大学建築学科に進学する。

 

「建築家という職業を意識していなかったのですが、昔からものづくりが好きだったので、建築も面白そうだと考えて選んだのが正直なところです」

 

大学で建築を学ぶにつれて、高校までの学問との大きな違いを感じるようになる。問題を解けば一つの答えに辿り着くのではなく、建築には〝正解〞といえるものがない。設計製図の授業では、石山修武氏、古谷誠章氏、入江正之氏など、そうそうたる講師陣がずらりと並び、それぞれ違う視点の評価がされる。

そこでは優等生的な正解を求められるのではなく、既成概念を崩して新しいものを生み出す〝アイデア〞が評価された。

「いったいこれはどういう評価基準なのだろうと不思議でした。先生たちへのプレゼンは恐怖でもありましたが、面白く、ゲーム攻略に近いような感覚で、どっぷりとはまりましたね」

大学院進学を決めた頃には「もう建築家以外の道は考えられなかった」と鬼木氏は言う。
大学院は意匠系の古谷誠章教授の研究室へ。ここでも佐藤氏と共に過ごした。しかし、大学院修了後に自分の事務所(nendo)を興した佐藤氏とは対照的に、鬼木氏は組織設計事務所最大手の日建設計に就職する。

「建築設計をやると決めていたので、選択肢としては組織設計事務所かアトリエかの2択。大学で学んでいたのは建築の思想や考え方でしたから、建物をつくる線を引きたいと感じていました。実務経験が積みやすく、給与も高い(笑)。結果、選んだのが日建設計だったのです」

日建設計では大学キャンパスなど教育施設を主に設計する部に配属され、コンペ当選以降の基本・実施設計をメインに行いながら、様々なプロポーザルにも参加した。建物を設計するプロセスや、プロジェクトの中での設計士のスタンス、クライアントへの接し方などの実務を猛スピードで学んでいく。30歳までは日建設計に留まり、建築家としてトップを目指す身の振り方を考えるつもりだった。

組織事務所の設計は、あらゆる方面から正解を求められる。〝既成概念を崩す〞というそれまで受けてきた教育とのズレを感じながら設計をする自分に、徐々にフラストレーションを感じるように。

そんな時に、佐藤氏から「一緒にやらないか」と話を持ちかけられる。
「世界一の事務所をつくるといわれ、その漠然とした目的に興味を持ったんですね。日建設計を辞めるというより、仲間の元に戻るという感覚でした」と鬼木氏は笑う。

nendoでは空間部門を担当。佐藤氏をメインのデザイナーとし、話し合いながら設計を進めた。物販店舗を中心に、天理市の駅前広場などをはじめ、海外案件も徐々に増えていった。

しかし、nendoの知名度が上がり仕事が増えるにつれて、業務過多という事態が発生する。鬼木氏は仕事を限定し、クオリティにこだわることがnendoの価値を高めると考えたが、佐藤氏は所員を増やして鬼木氏がディレクションを徹底すれば大丈夫であると主張。

結果、この価値観の相違から、鬼木氏は独立を決意するのだが、お互いの意向を認め合ったうえの円満退職であった。

そして、鬼木氏の設計を求めていたクライアントからの声がかりもあり、独立後のプロジェクトは順調に決まっていく。最初に手がけたのは、ギンザシックス内のギャラリー「アールグロリュー」。さらに担当役員がこのプレゼンを見ていたことから「エルメス祇園店」の仕事を引き受けることになる。

 

⇒【次ページ】 連立方程式の解答にデザインを見いだす

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PROFILE

鬼木孝一郎

鬼木孝一郎

おにき・こういちろう
1977年、東京都生まれ。早稲田大学大学院修了後、株式会社日建設計勤務。
その後、有限会社nendo入社。
10年間にわたりチーフディレクターとして国内外の空間デザインを手がける。
JCD賞金賞、JID賞大賞など、受賞歴多数。
2015年に独立し、鬼木デザインスタジオ設立。

株式会社鬼木デザインスタジオ

所在地/東京都目黒区駒場1-28-1-404
TEL/03-6804-7389
http://oniki-design-studio.com/

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