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設計対象はヒト・モノ・コト。<br />様々な暮らしを豊かに変える「物語る風景」をカタチに

設計対象はヒト・モノ・コト。
様々な暮らしを豊かに変える「物語る風景」をカタチに

菅原 大輔

〝構造〞を武器に快適な空間の実現へ挑戦は続く

フランスから帰国して独立すると、菅原氏の評判はすぐに広がった。知人からの紹介などにより、少しずつ仕事が舞い込むようになる。建築はもちろんのこと、まちづくり、ブランディング、災害支援プロジェクトなど、専門分野を横断した幅広いオーダーの数々。それらすべてに共通するのは、「物語る風景をつくる」というコンセプトだ。

「例えば、まちづくりなら、そのまちの風景が自ずと未来を物語る。あるいは建築なら、使い手一人ひとりがそれぞれの過ごし方を物語る。そんな風景をつくるために、ヒト・モノ・コトの美しい関係を設計しています」

2014年に手がけた「時の流れる家」には、同時に2つの「物語る風景」がつくられた。

一つは、室内の〝物語〞。鍵付きの寝室を3つ並べることで、1世帯から3世帯まで、時代の変化をアレンジしながら、それぞれの〝物語〞を紡ぐことができる。もう一つは屋外の〝物語〞。あえて錆びやすい素材を外壁として使うことで、その場所特有の気候や生活の痕跡を記録させ、地域の風土でデザインを完成させていく。

「お客さまからは、『いいものをつくってほしい』といった要望をいただく。私は、そのお客さまを巻き込み、いくつもの案の中から一緒に選んでいただく。そうすることで、お客さまはそこから生まれる〝物語〞を〝自分事〞として感じることができる。目的は、美しいカタチをつくることではありません。カタチをツールとして、〝物語〞の場を提供することなのです」

そんな自分の〝想い〞に確信を持てたのが、11年、東日本大震災後に手がけた「陸前高田市の仮設住宅団地」のプロジェクトだった。

「この案件で、私はすでに設計された仮設住宅をどう配置するか、そしてどうインフラを整備するかというマスタープランを担当しました。配置計画では、住宅と住宅の向きをひねって配置することにより、住む人同士のプライバシーを守りながら、コミュニケーションスペースを確保。そして、インフラ計画では、既存の設備を積極的に活用し、成熟した既存の自然環境を守ることができました」

建物をツールとし、その置かれ方や既存環境を操作することで、住みやすさという〝物語〞の場を提供できた事例である。

「既存の社会を空間化する――これがこれまでの建築の概念だったのかもしれません。しかし、インターネットの発展により、情報流通の質とスピードは加速し続け、過去の常識では計画すら立てづらい時代になった。また、専門性という既得権益や価値観もどんどん更新されています。そういった意味で僕は、建築やアートディレクションなど、ものづくりの業際を重ね、編集し、〝新しいデザイン〞を生み出していきたい。そして、世の中に新たな『物語る風景』をつくり出す。それが、これからの僕の役目なのだと思います」

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PROFILE

菅原 大輔

菅原 大輔

すがわら・だいすけ
1977年、東京都生まれ。
2000年、日本大学理工学部建築学科卒業。
03年、早稲田大学大学院理工学研究科修了。
シーラカンスアンド・アソシエイツ、Jakob+Macfarlane(仏)、
Shigeru Ban architect Europe(仏)を経て、
08年にSUGAWARADAISUKEを設立。
日本建築学会作品選集新人賞など国内外で受賞多数。
日本大学、早稲田大学非常勤講師。一級建築士。

SUGAWARADAISUKE

所在地/東京都杉並区和泉2-11-1 B棟203号
TEL/03-6265-7472
http://sugawaradaisuke.com/

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