設計対象はヒト・モノ・コト。
様々な暮らしを豊かに変える「物語る風景」をカタチに
菅原 大輔
海外で視野を広げ自らの礎を築く
菅原大輔氏は若き頃、医師であった親戚の影響を受け、自分も医師になろうと考えたことがあった。しかし、日本大学の付属校の内部推薦により、理工学部建築学科に進んでいる。
「今振り返れば、この2つの道には共通点があった。人間を生物学的に見るのが医師なら、生態学的に見るのが建築家。いずれにしても、人間を理解することに興味があったのでしょう」
大学に進学すると、建築に関する才能が芽を出し始める。課題で自身が提出した作品が、学内で評価されていったのだ。
卒業後は、憧れの建築家である古谷誠章氏の研究室に入るため、早稲田大学大学院に進学する。この頃の経験が、のちに菅原氏を海外へと導いていく。
「日本建築学会が主催する建築文化週間の学生会議に、早稲田大学代表の運営メンバーとして参加したのです。議論を重ねるなか、各大学の建築学教育に特徴があることに気づきました。日本大学なら〝社会性の建築〞、早稲田大学なら〝自分の内面から出てくる建築〞、慶應義塾大学なら〝コンピュータ言語と建築〞といった具体に。それらが集まって日本建築界の地平線を描いているのだ、と。であれば、海外に出て、世界での立ち位置も知りたいと思ったのです」
大学院修了後は、一級建築士免許取得まで、設計事務所シーラカンスで働く。そして取得後、単身パリに渡った。
「日本語と英語という2つの言語の内と外だけではなく、自分にとって3つ目の言語、フランス語を習得したことで、言語の多様性と、言葉に潜む文化の特性がわかるようになった。まずはそのことが収穫でした」
現地では、趣の異なる2つの事務所を経験し、礎を築いた。「一方はデジタルデザインで有名な事務所。細部までモデリングするので、模型をつくらない。もう一方は、素材や色を詳細に反映させた模型をつくる事務所。模型に光の反射や素材感などゆがみがなく、伝わりやすい。この両方の事務所で学んだいいところを取り込み、自らの手法に昇華させていきました」
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すがわら・だいすけ
1977年、東京都生まれ。
2000年、日本大学理工学部建築学科卒業。
03年、早稲田大学大学院理工学研究科修了。
シーラカンスアンド・アソシエイツ、Jakob+Macfarlane(仏)、
Shigeru Ban architect Europe(仏)を経て、
08年にSUGAWARADAISUKEを設立。
日本建築学会作品選集新人賞など国内外で受賞多数。
日本大学、早稲田大学非常勤講師。一級建築士。
- SUGAWARADAISUKE
所在地/東京都杉並区和泉2-11-1 B棟203号
TEL/03-6265-7472
http://sugawaradaisuke.com/