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環境共生ブランド 『with TREE』の 挑戦とは。

環境共生ブランド 『with TREE』の 挑戦とは。

熊谷組

熊谷組が、住友林業との協業で推進する中大規模木造建築。その核となるコンセプトブランド『with TREE』は、「環境」と「健康」をテーマに、新たな建築の付加価値を創造する。その挑戦を主導する三人に、中大規模木造の可能性について聞いた。

熊谷組が組織横断で取り組む中大規模木造建築。

─まずは中大規模木造建築ブランド『with TREE』が立ち上がった経緯をお聞かせください。
服部:熊谷組は、建築事業、土木事業を中心に様々な建設事業を手掛けています。そのなかで、近年は木造も含めた「環境建築」として脱炭素社会に向けたアプローチが非常に増えているという背景があります。そこで、以前は木造関連の業務は各部署で個別に行っていましたが、現在は「中大規模木造推進室」がハブとなり、組織として一体で動いていくようになりました。

栂野:この推進室には、建築部門、営業部門、技術研究所、設計部門など、各組織から兼務でメンバーが集まっています。全国からの情報や相談事がここに集約され、それぞれの専門分野に仕分けされることで、部門を横断したスムーズな連携が可能になっています。その流れの中で生まれたのが、住友林業様との協業ブランド『withTREE』ですね。

服部:2017年に住友林業様と業務資本提携を結び、勉強会やワーキングを重ねた後、2019年に推進室を設立しました。そして2021年に、「環境と健康をともにかなえる建築」というコンセプトで『with TREE』を立ち上げたという経緯です。

 また、戦後に植林された杉が成熟期を迎え、日本の森林資源を建築に活用用し、ファサード側、あるいは高層部を木造にするなど、様々なパターンを可視化してお客様と実現可能な形を探ります。それに伴い、設計の進め方自体も変わりました。以前は意匠設計が先行していましたが、今は企画の初期段階で意匠、構造、設備、そして施工の担当者が集まり、皆で話し合いなが
ら一緒に作り込んでいきます。

─中大規模木造建築には、どのような魅力や価値があるとお考えですか。
谷合:建設地、敷地、立地など、様々な条件の中で、どのように力を流し、木材を活かした構造を成立させるか、さらに開発した技術をどこに採用すべきか考え抜いて、それがイメージ通りに実現した時の達成感は格別ですね。

栂野:『with TREE』が掲げる「健康」と「環境」という二つのテーマに、木造の価値が集約されていると思います。「健康」面では、木の香りがもたらすリラックス効果や集中力向上が科学的に証明されていますし、木ならではの手触りなども大きな魅力です。「環境」面では、木はCO2を吸収し、建材として使うことで炭素を長期間貯蔵できます。そして、木材は唯一の循環可能なエネルギー資源でもあります。なので戦後に植えられ、今まさに活用すべき時期を迎えている森林資源を適切に循環させることが、非常に重要だと考えています。

─最後に、『with tree』の今後の展望をお聞かせください。
服部:今はオフィスビルが中心ですが、これからは学校建築、病院、ホテルなど、さらに用途を広げていきたいですね。技術開発を進め、私たち自身も学びながら、中大規模木造の可能性に挑戦し続けていきたいと考えています。


熊谷組が手がける中大規模木造建築の事例。❶KiGi AIHABARA。熊谷組住友林業JV/令和6年度優良木造建築物等整備推進事業、先導枠採択。ハイブリッドオフィス❷熊谷組福井本店。熊谷組設計施工/木造ハイブリッド造によるスマートウエルネスオフィス。Nearly ZEB取得❸H¹O青山。熊谷組設計施工/ファサード側木造と鉄骨造による都市型ハイブリッドオフィス

東京ビッグサイトで開催された非住宅木造建築フェア2025「with TREE」出展ブースでの様子。上段左から▶︎住友林業/今井洋輔。熊谷組/菅野友弥、服部剛、谷合龍夫、川上満彦、三宅朗彦、青木浩幸。下段左から▶︎住友林業/細野通陽。熊谷組/今井詩映里、山田ゆり、常德真琴、浜田晶子、栂野晃。

『環境と健康を、ともにかなえる「建築」がある』をコンセプトに掲げる「with TREE」。
PROFILE


谷合龍夫/Ta t s u o Ta n i a i

設計本部設計企画部木造設計G耐震設計部 部長

1990年工学院大学・建築学科卒業後、熊谷組入社。現場配属後1991年より構造設計部、2022年より現職、2025年より耐震設計部兼務。部長。開発部材を採用した木造ハイブリッドビルの構造設計、構造提案、CO₂削減提案など継続中。一級建築士、構造設計一級建築士。

栂野晃/A k i r a To g a n o

建築事業本部建築技術統括部

中大規模木造建築推進室 室長

サステナブル建築技術部 部長

1991年 東海大学・工学部建築学科卒業後、熊谷組入社入社以降30年の現場施工にて、様々な用途の建築に携わる40歳より某デベロッパー専属所長、2023年より中大規模木造建築推進室室長、2024年よりサステナブル建築技術部兼務。現在は熊谷組全支店のCO₂削減に取り組み、週末は栃木の里山でキ環境教育インストラクターとして子供たちにネイチャープログラムを展開中。一級施工管理技士・環境経営士・環境教育インストラクター。

服部剛/Ts u y o s h i H a t t o r i

設計本部設計第3部 部長

1989年法政大学工学部建築学科卒業後、熊谷組入社。2019年より現職、とともに中大規模木造推進室及び企画部木造Gを兼務、住友林業とのブランド「withTREE」の立上げに参画。中大規模木造建築及びサステナブル建築の開発・設計を継続推進中。一級建築士。

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