アーキテクト・エージェンシーがお送りする建築最先端マガジン

Architect's magazine

MAGAZINE TOP > Architect's Opinion > 株式会社 山下PMC 代表取締役社長 社長執行役員 川原秀仁

“手段”よりも“目的”が重要。設計の“本業”を再認識すべき

“手段”よりも“目的”が重要。設計の“本業”を再認識すべき

株式会社 山下PMC 代表取締役社長 社長執行役員 川原秀仁

コンストラクションマネジメント・プロジェクトマネジメント(CM/PM)事業を展開する当社が、お客さまのための「施設参謀」を標榜していることは、すでに述べた。その先に我々は、「社会先進立国」の実現に貢献したい、というビジョンを描いている。

次世代ビジネスモデルの起点となる領域は、①技術先進国の堅持、②クールジャパンの国づくり、③国内インフラ・RE(不動産)再構築と強靭化、④健康長寿社会の実現と少子高齢化対策、⑤スポーツビジネスと余暇、⑥メディアおよび情報流通の変革、⑦金融ビジネスの変革――の7つに整理される。そして新たなビジネスモデルを創造していくためには、建設生産バリューチェーンの再構築が必須だと考えている。

例えばインフラ・REの再構築を考えれば、それは急務の課題であると同時に、チャンスに満ちた市場である。中核都市を支えるインフラのほとんどが高度成長時代に築かれたもので、耐用年数上も償還時期を迎えている。ただし、次の償還に向かって、同じものをつくるわけにはいかない。

それこそ次世代、次々世代のビジネスを見越して、再構築を図る必要がある。ビジネスは、間違いなくデジタル・ディスラプションの洗礼を受け、新たなモデルに生まれ変わる。それと施設とを、どのようにドッキングさせていくのか。例えば、道路は単なる構造物ではなく、自動運転やラストワンマイルの人の手と融合して、初めて有用なインフラとなる。そうしたニューインフラの構築には、従来の建設とか改修とかを超えた発想が必要になる。そこに新たな価値、大きなビジネスチャンスも生まれるのである。

確かに中国の脅威はあるし、グローバルに展開するプラットフォーマーの脅威も存在する。しかし、日本が他に真似のできない次世代モデルを実現することは、決して夢ではないと思っている。少子高齢化が社会に影を落としているが、見方を変えれば、日本はこの問題のトップランナーだ。医療や介護の枠を超え、スポーツ振興や健康長寿、娯楽なども包含した“ピンピンコロリ”の複合モデルが完成すれば、後に続く国々への外販も可能だろう。

重要なのは、①~⑦の領域が、個々の変革を促しながら、IoTやAIも活用して様々に“インテグレート化”していくことである。それは無限大と言っていい相乗効果を生むはずだ。

私は、もともと農水系公共事業やODA事業(JICA)に従事し、国の様々な制度、その位置付けなどを学んだ。その後設計の仕事を始めて感じたのは、この世界の「レンジの狭さ」であった。CM/PMの世界に身を投じるようになってからは、分断された事業および設計と施工を、もっとコンカレントな関係にできないか、という問題意識で仕事に取り組み、その結果、公共のデザインビルド方式、ECI方式の礎をつくることができたと自負している。

そんな私が若い設計者の方々に言いたいのは、今の業務が設計のすべてだとは思わないでほしい、ということである。設計は、秀逸な建物やその運営を実現するための手段。手段はいずれ変わる。変わらないのは、どれだけの感性やエスプリを発揮して、それを現実の形にできるかという、自動化できない部分なのだ。これからは、形だけではなく、中にいる人の営み、ビジネスと建物とをどうつなぎ合わせていくのかというのが、設計の“本業”になるかもしれない。

PROFILE

Hidehito Kawahara

Hidehito Kawahara
川原 秀仁

1983年、日本大学理工学部建築学科卒業後、農用地開発公団、農用地整備公団、JICAを経て、
株式会社山下設計へ。
99年、株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ(現山下PMC)の創業メンバーとして参画。
現在、同社のCEO・COOとして企業ドメイン全体の構築を担う。
一級建築士、認定コンストラクションマネジャー、認定ファシリティマネジャー。

アーキテクツマガジンは、建築設計業界で働くみなさまの
キャリアアップをサポートするアーキテクト・エージェンシーが運営しています。

  • アーキテクトエージェンシー

ページトップへ