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同じ建築設計事務所出身の3人が、独立後、コンペ参加を通じて融合。強いパートナーシップでものづくり

同じ建築設計事務所出身の3人が、独立後、コンペ参加を通じて融合。強いパートナーシップでものづくり

株式会社SALHAUS一級建築士事務所

同事務所は、山本理顕設計工場に在籍していた安原幹氏、日野雅司氏、栃澤麻利氏の3人が別々に独立した後、“再結集し”、2008年にスタートした。

「山本さんの事務所でも、みんなで話し合いながら、かたちにしていく仕事のやり方をしていたんです。だからバラバラでいるよりグループワークのほうが慣れていたし、仕事のチャネルも増えそうだと考え、集まりました」(日野氏)。

現在、3人のほかスタッフ5人で、主に公共建築などの比較的大規模な建造物の設計に携わる。同事務所の特徴は、フラットな組織運営だ。安原氏は「公共の仕事のプロポーザルでは、個人住宅とは比較にならない多角的な視点から評価を受けます。それだけに、内部で“小さな公共性”のようなものを担保したい、という思いがありました。単に我々がスケッチを描いて、スタッフが完成させるのではなく、全員が対等な立場で話し合い詰めていく。そうしたプロセスを繰り返すことで、多くの人々に対して確信を持って説明可能なアイデアが出来上がっています」と話す。

3人が初めてコンペで射止めたのが、13年に竣工した群馬県農業技術センターだ

3人が初めてコンペで射止めたのが、13年に竣工した群馬県農業技術センターだ。プロポーザルで求められたのは、研究者、生産者、消費者がともに集える「開かれた技術センター」。その象徴として提案したのは、建物全体を覆う木造の大屋根。実物を見れば、要望を見事に体現していることが理解できるはず。「建築の専門家じゃなくてもわかるところが、共感を呼んだのだと思います」と日野氏は“勝因”を語る。

一方栃澤氏は、「プロポーザルで案を提示する際、我々として譲れない部分とクライアントの要望に合わせて変えていける部分とを、明確に打ち出していくよう心がけています。この案件に関していえば、木の大屋根だけは死守するけれど、ほかのプランニングは柔軟に対応する。関係する多くの人々がそうした姿勢を理解してくれて、現場の仕事もわりとスムーズに進みました」と振り返る。

設計する建物ごとに新たな経験ができるのも、この仕事の醍醐味です

同事務所はこれ以外にも、旅館や集合住宅など様々な建築物を手がけてきたが、「建物によって得手不得手があるとかいうことは、基本的にありません。3人とも、むしろいろんなことに手を出したがる(笑)。役者さんが役柄によって医者や弁護士の人生を疑似体験できるように、設計する建物ごとに新たな経験ができるのも、この仕事の醍醐味です」と安原氏は言う。

そんな彼らは、今「僕らにとって、いろんな意味で特別なプロジェクト」(日野氏)に取り組んでいる。被災地・岩手県陸前高田市の3校統合中学校の設計を任されたのだ。学校はまさに“新たな体験”になる。

『被災者と語り合える“人”で選びたい』が、コンペ審査委員長のメッセージでした

「『被災者と語り合える“人”で選びたい』が、コンペ審査委員長のメッセージでした。学校建築の設計に実績のある大御所建築家の方々も参加していたのですが、我々が一番若いし、話しやすそうだし、というところが評価されたのかも(笑)」(栃澤氏)。今秋から建設が始まり、16年に竣工予定となっている。

今後も仕事の幅を広げていくために、「もう少し人数を増やし、できれば毎年新しい人が入ってくるのが理想形」と栃澤氏は話す。「一人でコツコツ仕事というより、積極的にディスカッションに参加してくれるタイプがいいですね」(安原氏)。

PROFILE

株式会社SALHAUS一級建築士事務所

株式会社SALHAUS一級建築士事務所
SALHAUS

所在地/東京都渋谷区東1-4-1 尚豊ビル606 TEL/03-3498-4222
http://www.salhaus.com/ 安原幹氏(1972年、大阪府生まれ。東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻修士課程修了)、日野雅司 氏(1973年、兵庫県生まれ。東京大学大学院工学系 研究科建築学専攻修士課程修了)、栃澤麻利氏

(1974年、埼玉県生まれ。東京理科大学大学院理工 学研究科建築学専攻修士課程修了)の3人が2008 年からチームを組み、09年に株式会社SALHAUSを設立した。

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