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自動車業界から、引く手あまたの設備設計へ

自動車業界から、引く手あまたの設備設計へ

株式会社山門設備設計

自動車業界での開発経験を経て、建築設備設計の世界へ転身した株式会社山門設備設計の一柳氏。2023年11月の創業からわずか2年で「営業いらず」の急成長を遂げる同社に、設備設計という領域の現状と、業界の未来について訊く。

「褒められない」ことこそが、最高の賞賛。作業そのものを楽しめる人は伸びる。

── まずは山門設備設計の事業内容についてお聞かせください。どのような領域を手掛けられているのでしょうか。

一柳哲也(以下、一柳):我々は、電気、給排水、空調といった建物に付随する「設備」の設計を行う会社です。規模としては住宅の中でも少し大きなRC造のマンション、それから工場、小中学校の改修などですね。公共案件の割合も多く、全体の4割ほどを占めています。意匠設計が建物全体の取りまとめ役であるとすれば、我々はその中の「設備の取りまとめ」という立ち位置です。

── 創業からわずか2年とのことですが、案件の受注はどのようにされているのですか?

一柳:正直なところ、ほとんど営業をしたことがないんです。ホームページやブログでの発信、あとは県の「設備設計監理協会」にリストアップされていることで、自然と意匠設計事務所からお問い合わせをいただいています。

背景には、業界の構造的な需給バランスがあります。意匠設計事務所10社に対して、設備設計事務所は1社あるかどうか、という「10対1」くらいの割合なんです。そのため、ありがたいことにご依頼が絶えない状態で、ときにはお断りせざるを得ないこともあります。



BIM&3D

建物全体の配管を統合モデルで管理し、設備同士の干渉を事前に調整するBIM業務。

── 一柳さんは元々、自動車会社でエンジニアをされていたという異色の経歴をお持ちです。なぜ自動車業界から建築設備の世界へ転身されたのでしょうか。

一柳:友人の親御さんが営んでいた設備設計事務所を副業として手伝い始めたのが転機でした。建築の設備設計は自動車業界よりも開発スパンが短く、自分の裁量で進められる部分が大きいので、そこに面白さを感じたんです。また、設備設計業界は個人や少人数の事務所が多く、「大企業でなくても、エンジニアとして独立してやっていける世界がある」と気づいたことも大きかったですね。

── 建築業界では意匠設計が花形として目立っていますが、意匠設計と設備設計では、建築に対する視点や価値観にどのような違いがあるとお考えですか。

一柳:意匠設計と設備設計では、目指すべきアウトプットの質が対照的だと感じています。意匠設計は、美しい外観や感動、驚きといった「ポジティブな価値」を提供するのが仕事です。対して、我々設備設計が目指しているのは「欠点がないこと」、「クレームがないこと」なんです。

例えば、水が流れない、お湯が出ない、暑い、寒い。これらはすぐにクレームになりますよね。「寒くもなく暑くもなく、過不足なく快適であること」が、我々が提供する価値です。「何も褒められない、何も言われない」ことが一番の褒め言葉であり、その「当たり前」を黒子として支え続けるのが、設備設計の役割ですね。

── 「褒められないことが褒め言葉」というのは、非常に職人的でストイックな世界ですね。では、その中にある「設備設計の面白さ」とは何でしょうか。

一柳:スティーブ・ジョブズが初期のマッキントッシュを作った際のエピソードがあります。彼は筐体の中の基板を見て「配線が美しくない、直せ」と指示したそうです。社員が、中身なんて誰も見ませんよ」と言うと、ジョブズは「自分が見るんだ」と答えたといいます。

設備設計の面白さも、これに通じるものがありますね。天井裏やパイプシャフトの中など、普段は誰の目にも触れない部分の配管や配線が、整然と美しく通っている。そこにシンパシーを感じられる人であれ、この仕事にハマると思います。

── これから設備設計を目指す人には、どのような資質が必要だと思いますか?

一柳:もちろん資格取得はマストですが、それ以上に「作業そのものを楽しめるか」という適性が重要だと思います。例えば、ゲームの『マインクラフト』のように、「ひたすらブロックを積み上げていくような作業」にも、夢中になれるか。「完成品が好き」というよりも、その「積んでいくプロセス自体が好き」になれる人は、経験ゼロからでも確実に伸びていきます。

── 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

一柳:会社としては、やはり規模を大きくしていきたいと考えています。それは単に収益を伸ばしたいからだけではなく、業界全体で設備設計者が圧倒的に不足しているからです。なので我々が人を育て、くの案件をこなせるようになることが、結果として建築業界への貢献になると信じています。

そのために、経験がなくても「思い」と「適性」がある人を一から育て上げて行きたいですね。


Interior lighting plan

室内照明計画。用途に応じた照度と配光を検証し、眩しさやムラを抑えた最適な照明環境を設計する業務。

House details map

住居詳細図。住戸内の設備配置と取り合いを整理し、施工性と安全性を確保するための詳細図を作成する業務。

Lighting appearance

照明姿図。器具ごとの寸法・仕様を整理し、メーカー変更にも対応できる照明姿図を作成する業務である。

Stage lighting

舞台照明の事前検討。舞台に必要な照度・影・演色性を3Dで検証し、最適な照明配置を設計する業務。
PROFILE


 

一柳 哲也/Tetsuya Ichiyanagi

株式会社山門設備設計代表取締役

名古屋で育ち、トヨタ自動車で18年量産車の開発に携わった後、2023年に山門設備設計を創業。手探りの状態から、様々な方のサポートをいただき2年間で50件以上の物件をこなしてきた。これからは会社の設計能力アップとスケールアップを実施していきたい。

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