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Architect's magazine

建築の力で一石を投じる。窮屈になりつつある世の中に、多様な選択肢を提示したい

建築の力で一石を投じる。窮屈になりつつある世の中に、多様な選択肢を提示したい

オルタナティブな視点、態度を生む建築

松島氏のこうした建築観は大阪府豊中市の住宅「Triton」などに色濃い。桜並木とため池という絶好の眺望に対し、あえて斜に構えたスペースをつくる。また半外部空間を建物内に取り込むことで建物内外の境界を消し、ファサードは建物の輪郭を曖昧にする迷彩模様である。

「ここで僕の実家の話に戻るのですが、こうすると視点が滅茶苦茶増えるんですね。池や桜などの景観も季節によって変わりますし、そこに建築上の視点の多さをかけ算すると、とてつもない数の関係性が生まれる。だから住んでいて飽きがこないし、日々発見がある。雑多な家で育った人間として、雑多な状況を楽しみ、雑多の中から生まれるものをつくりたい、全体性が掴みにくい複雑な環境の魅力を知ってほしい気持ちがあります」

故郷の長野県飯田市に建築した「育良保育園」も安全性や管理しやすさなど〝あるべき論〞から自由だ。4層のスキップフロア型保育園で、一見してバリアフリーとは無縁。「バリアがあるからこそ特別な経験ができる、子供たちの危機管理能力も高められる」との意図を込めた。

こうした視覚的なインパクトの強さや楽しさも松島氏が手がける建築物の個性の一つ。だがそれも一様ではない。クライアントの要望に応えるなかで具現化するものであり、「その要望の答え方も複雑であるほうが面白い」と松島氏は強調する。

「僕はとにかくお客さまとコミュニケーションをとりたい。『こうあるべき』というビジョンはないので、まずお客さまから情報を引き出す必要があります。その情報に対する応え方も増やしていきたいのですが、それには情報を受け取るこちらの人間を増やすことが近道。冗談でスタッフ1000人規模の事務所にすると言っています(笑)」

松島氏が建築をとおして訴えているのは常に、主流とは異なる視点だ。自身が青春時代を過ごした1990年代にはオルタナティブという音楽ジャンルが誕生しているが、「僕はいまだに影響を受けています」。

「自分の建築のことも〝トランスオルタナティブ〞と表現しています。『こう見ろ』と一つの視点を押し付けるのではなく『こう見たら』とたくさんの選択肢が集合してできている建築。これは修士制作で学んだリダンダンシーの考え方にも通じていますし、人間のメンタルにも必要なこと。一つの価値観しか信じられないと、それが崩れた時人は死んでしまうけど、『こういう考え方もあるよ』と切り替えられたら、しなやかに生きていけるじゃないですか」

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PROFILE

松島 潤平

松島 潤平

まつしま・じゅんぺい
1979年、長野県生まれ。

2003年、東京工業大学工学部建築学科卒業

(卒業制作、修士制作共に大岡山建築賞)。

05年、東京工業大学大学院修士課程修了後、

隈研吾建築都市設計事務所に入所。

11年、松島潤平建築設計事務所を設立。

グッドデザイン賞(Le MISTRAL)、

日本建築学会作品選集新人賞(育良保育園)など受賞多数。

芝浦工業大学非常勤講師。一級建築士

松島潤平建築設計事務所

所在地/東京都港区南麻布2-9-20
TEL/03-6721-9284
http://jparchitects.jp

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