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時代の最先端技術を探求しながら、 空間に新しい価値を創造し続ける

時代の最先端技術を探求しながら、 空間に新しい価値を創造し続ける

丹青社 CMIセンター

空間体験価値の向上を目指す

 商業施設から博物館などの文化施設まで、幅広い空間デザインを手がける丹青社は、空間体験価値の最大・最適化を目的、2017年、CMI(クロスメディアイノベーション)センターを創設。同社は、デジタル先端技術を活用した展示演出に注力してきたが、CMIセンター創設により、さらに革新的な提案を追求している。

 約20名でスタートした同センターは、現在60名を超える組織に成長。規模の拡大に伴い、現場でのテクニカルディレクションに加えて、企画段階からプロジェクトを主導できる体制が整ったと内田卓哉氏は述べる。

「21年に新設した開発部門を中心に、商品となる新たなソリューション開発を推進。一例として、空間を訪れた人々の行動をデータ化し、解析結果から施設の改善につなげる『FAC+(ファクタス)』を開発しました。蓄積してきた技術を商品化、実装を希望するパートナーと内容を深化させ、それを新たな案件に応用する、〝イノベーション〞と〝インキュベーション〞のサイクルを大切にしています」

「新たな価値を生み出す実証実験の場」をテーマとして開設された「Mk_3 LAB」。多様な分野の機材や設備でクリエイティブを促す

 また、同センターは、全社員のデジタルリテラシー向上を目的とした教育研修にも取り組んだ。新たな技術を開発しても、社員への周知と理解を進めなければ、実際の案件に反映しにくい。そこで、3年間をかけて独自の教育プログラムを開発、推進したという。

ラボの開設により実験と実践を円滑に

 同センターは、「福井県立恐竜博物館増改築プロジェクト」において、展示制作および施工を担当。博物館を象徴するシンボルモニュメントの設置では、エスカレーター間の狭い吹き抜けという厳しい条件に対応し、3Dでの検証を重ねながら最適解を見いだした。デザインの段階から各フェーズにわたりBIMデータを関係者と共有し、さらに動線に沿った見え方や納まりを検証するためVRによる検証も実施した。

「図面だけでは把握しづらい部分もあり、現場での手戻りが懸念されましたが、事前にバーチャル空間で確認し、全員が共通認識を持って進行。結果、大きな問題なく竣工を迎えられました」と内田氏は当時を振り返る。

 このような事前検証では、同センターが運営管理する「港南ラボマークスリー」が大きな役割を果たしている。3Dプリンターなどの機材に加え、スタジオも併設。ラボにいるメンバーに声をかければ、その場で問題が解決することも少なくない。アライアンス先やパートナー企業との交流や共創活動の拠点としても活用されている。

 さらに、同センターでは3年前から若手による「自主実践プロジェクト」をスタート。一定の予算内で実験的なアイデアに取り組むものであり、これまでに取引のない企業に声をかけ、試験的に協力を仰ぐ場にもなっている。昨年からは成果発表の場として「超文化祭」を開催。個々の技術をアピールするだけでなく、社内外に同センターの役割や活動を理解してもらう機会としても役立てている。昨年は、本社とラボの間をオリジナルキャラクターが道案内するアプリを開発。社外の参加者からは、災害時の誘導案内への転用など、実用化への期待が寄せられた。

 スタッフには、バックグラウンドにかかわらず、空間づくりにおいて人々を驚かせ、感動させる方法を突き詰めていける人材を求めている。

「デジタル技術は、あくまで手段の一つに過ぎません。重要なのは、訪れる人々にどのように感動や喜びを提供するか、です。現在、デジタル技術は演出や体験の質向上において有効ですが、最適解が別にあれば、アナログな手法を選ぶこともあります。ボーダーを越えて常に最適な技術を選び続けることで、空間の価値を高め、差別化を図っていきたいと考えています」

PROFILE

内田卓哉

内田卓哉

空間メディアマーケティング部
部長/チーフプロデューサー

うちだ・たくや/1999年、中央大学経済学部経済学科卒業後、
株式会社丹青社入社。
企業のブランディングやコミュニケーション活動にかかわる
幅広い分野の空間づくりに従事し、
2021年より空間体験の価値を最大化・最適化する専門チームで
あるCMIセンター(クロスメディアイノベーションセンター)に所属。
現在、ブランディングとマーケティングの目線で
新たな売りものづくりやアライアンス活動を牽引。

株式会社丹青社

所在地/東京都港区港南1-2-70
https://www.tanseisha.co.jp/
1946年創業の大手総合ディスプレイ企業。店舗など
の商業空間、博物館などの文化空間、展示会など、
様々な社会交流空間の課題解決を目的に、調査・企画
から設計、施工、空間演出や運営、保守まで一貫してサ
ポートする。

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