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設計、メディア、都市計画を横断しながら建築の可能性を拡げる

設計、メディア、都市計画を横断しながら建築の可能性を拡げる

Open A

「現在の仕事のウエートは団地や公共空間などのリノベーション3割、住宅や民間建築物の新築と、都市計画・まちづくりがそれぞれ2、3割、それに本執筆などメディア関係の業務が1割といったところでしょうか」

普通の設計事務所とひと味違うそんな同事務所の業容は、30代半ばという〝遅咲き〞で事務所を立ち上げた、馬場正尊氏の〝いろんな寄り道〞の産物だ。大学院の建築学科を修了した馬場氏だったが、「一度、建築以外の世界から社会を見てみたい」と、大手広告代理店に就職。そこでメディアの可能性を知る。
「テレビにしろ雑誌にしろ、取り上げた小さな情報が状況を変えていくのを目の当たりにして、これはすごいな、と。自分でやりたくなって、建築関連の季刊誌を創刊し、編集長に納まりました。いったんメディアができると、宮崎駿さんや黒川紀章さんのような巨匠には会えるし、自分たちの提案が現実味を帯びるし……。あの体験は、今の仕事に密接につながっています」

満を持して建築設計の世界に足を踏み出した2000年代初頭、折しも不良債権処理が社会的課題になっていた。そこで出会ったのがリノベーションの概念。「外資系企業の知人から、抱えた古いビルに付加価値を付け流動化できないか、と相談を受けた」のがきっかけだ。
「考えてみれば、人口は減り、建物は余っていく。古くなったストックをデザインや企画で再生してほしいというニーズは、これからますます高まっていく
はずだと直感しました」

とはいえ、まだリノベーション自体が広く認識されてはいなかった時代である。馬場氏はまず再生の先進国である米国を取材し、実例を集めた本を書く。そして、それを〝企画書〞代わりにして様々な提案を行い、顧客を獲得していった。
「やってみると、法の解釈や構造補強の方法など、再生ならではの複雑な問題が山積していることがわかってきました。それらを一つひとつ解決していくうちに、独自のノウハウが蓄積していったという感じですね」

実は馬場氏は事務所設立直後に、物件の隠れた魅力にスポットを当てた不動産取引サイト「東京R不動産」を開設した。そのことが大規模団地のリノベーションのコンペなどで、威力を発揮することがある。
「普通の事務所はデザインで終わりですけど、当社はこのエリアでこのデザインならばいくら、と家賃がつけられます。ご希望ならば『集客』も可能。クライアントにとって、これほど便利な存在はないでしょう(笑)」

設立当初はこうしたリノベーションの仕事が圧倒的に多かった同社が、新築物件やまちづくりの企画・設計などに裾野を広げていった背景には、「建物をいじるだけではなく、既成概念や価値観自体を疑って、それを変えていかなければいけないのではないか」という、馬場氏の時代認識があった。
「新築住宅といっても、力を入れているのは郊外の住処。あえて都心から離れて住むことで、新しい豊かな生活を営もうという提案です。都市計画にしても、従来と同じ発想で箱ものづくりをやっていても、衰退著しい地方都市は救えないと思うのです。どうやったら人が集うまちづくりができるのか、コンサル的なところから、行政や住民などとも膝を突き合わせて取り組みを進めているんですよ」

すでに馬場氏の故郷の佐賀市で、地域丸ごとのリノベーションが設計段階に入っている。
同社は、現在9名の陣容。「もとはサラリーマンですし、ボスの強烈な個性ですべてを決めていくというやり方は、僕には合わない。社員同士の関係はフラットで、かなり働きやすい環境だと思っています(笑)」

PROFILE

馬場 正尊

馬場 正尊

株式会社オープン・エー 代表取締役

1968年、佐賀県生まれ。

94年、早稲田大学大学院建築学科修了。

博報堂、早稲田大学大学院博士課程、雑誌『A 』編集長を経て、

2003年、Open A を設立。

都市の空地を発見するサイト「東京R不動産」のディレクションを手がける。

『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』(学芸出版社)など著書多数。

株式会社オープン・エー

所在地/東京都中央区日本橋本町4-7-5
TEL/03-3272-2290

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2003年設立。馬場正尊氏を含め9名が在籍し、うち2名は1級建築士の資格を持つ。

団地や会社オフィス、公共空間のリノベーションを主力に、郊外の住宅をはじめとする新築物件の設計、

および都市計画やまちづくりの企画提案、コンサルタント、設計に独自の地歩を築いている。

事務所名はOpen A=オープン・アーキテクチャーで、「建築という世界を開いていこう」という思いを込めた。

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