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予定調和はつまらない。期待を超える“裏切り”で、世の中をより豊かに、より楽しい環境に変革する

予定調和はつまらない。期待を超える“裏切り”で、世の中をより豊かに、より楽しい環境に変革する

サポーズデザインオフィス 谷尻 誠/吉田 愛

「建物の設計から学んだことは、あらゆる分野に置き換えられるんですよ。それこそ家具づくりにも、菓子づくりにも」。建築設計事務所サポーズデザインオフィスを率いる谷尻誠と吉田愛。広島と東京の2拠点を行き来しながら、住宅、商業空間、インスタレーション、プロダクトと縦横無尽な活動を続ける。2017年には社員の食堂でありながら一般客も利用できる「社食堂」を東京オフィスにオープン、さらには「絶景不動産」の名で不動産事業にも進出。いずれも、旧来の建築事務所の枠を揺さぶる〝技〞の賜物にほかならない。

扱いにくさを個性に。斜面に建てた家がグッドデザイン賞に

広い敷地を少ない予算で、狭い敷地に大きな家を、日当たりの悪いところに明るさを。建築家の頭を悩ませるこうした矛盾は、しかし扱い方次第で〝予定調和〞のものづくりを崩す個性にもなり得る。

「毘沙門の家」は床が平らでなければならない建物を斜面につくるという矛盾から生まれた。普通なら疑いを持たず土地を造成するところだが、そこで「なぜ?」と問うのが谷尻と吉田だ。床さえ平らであればいいのに土地まで平らにする必要はあるのか。二人が「小学生レベル」と笑う素朴な問いを繰り返すうちに、高床式住居を思わせる建物に行き着いた。斜面に挿入した6本の鉄骨に支えられた家が、高台の端に浮かんでいる。この「毘沙門の家」は03年のグッドデザイン賞を受賞、事務所の出世作となった。

「考えてみると僕ら自体が斜面地みたいなもので。大学は出ていないし、アトリエ事務所も知らない。どちらかというと癖があって、その扱いにくさを個性にしています。同じように条件の悪さも建物の個性になる。一般的にはよくないとされることを価値に変えていく、それは自分たちを肯定するような意味もあるんですよね」(谷尻)

同じデザイン学校のインテリアデザイン学科で知り合った二人である。谷尻は「何となくデザインってカッコいいから」、吉田は「昔から住宅のチラシを眺めるのが好きだったし、美術館も好きだし、イラストレーターにでもなれたら」と選んだ進路だ。卒業後、谷尻は建売の設計事務所へ。吉田は施工会社へと就職していった。

「給料はまあまあ、休みもほどほど。居心地よくて、このままでもいいかなと思ってたんですけどね」(谷尻)

そこから先の話が少々込み入っている。まず谷尻はインテリアデザインを志したのである。ビームスクリエイティブがインテリア部門を立ち上げたと聞き、面接を受けるため会社を退職。が、あえなく不合格。前職となる建築事務所で働き始める。

「本物の建築家を知ったのはこの頃。それまで雑誌で見たことはあっても、自分たちの近くにいる感覚がなかった。初めて格好いいと思いました」(谷尻)

そして00年、広島で独立。理由は、熱中していた自転車レースに参加する時間をつくるためだ。仕事は下請けでいいと思っていた。「アトリエ建築家の仕事に憧れてはいたけれど、つくる能力はまだなかった」と谷尻。しかし、ここでも当てが外れてしまう。

「1枚いくらで図面を描くんですが、大してできもしないくせに『もっとこうしたほうがいいんじゃないか』とか提案してたんですね。提案してくる下請けって扱いにくいでしょう。それでだんだん仕事がなくなって、焼き鳥屋でバイトしてました」(谷尻)

ところが、そこから俄かに忙しくなる。暇だからと昼間街を遊び歩いていると顔が広がり、友人から「今度〇〇が店を出す」といった情報が入るようになった。カフェ、美容院、飲食店と頼まれるままに1年で10件ほどの店舗設計を手がけた。

「何にも知らなかったんですけど。つくりまくりながら学ぶ感じで」(谷尻)

01年には吉田もサポーズデザインオフィスに合流。初めての住宅は吉田の友人から依頼されたものだ。完成するとフライヤーを街にまき2日間のイベントに仕立てた。店舗づくりばかりしていたおかげか、「同世代の友人や、建築やインテリアに興味のある人も来てくれて」(吉田)、2日で300人が来場する盛況ぶり。以降オープンハウスで人を集め、次の依頼につなげるというサイクルを確立させていく。サポーズデザインオフィスは軌道に乗った。「毘沙門の家」はメディアに取材されるようになり、広島のみならず、全国から問い合わせが来るようになった。

「『新建築』や『カーサブルータス』といった雑誌編集部にこちらから訪ねていくこともありました。記事になるかはさておき資料を見せると編集者がいろいろ聞いてくるじゃないですか。すると『ここが自分に足りない』『そこまで考えないとダメなんだ』とわかって、よりコンセプチュアルに物をつくるようになっていった。つくり方は現場の職人さんや施工会社さんに教わったし、建築の思想は編集者や写真家に教わったわけで、周りに育ててもらった感覚がすごくあります」(谷尻)

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建物だけがよくても、人が来なければ何も生まれない

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PROFILE

(左)谷尻 誠

(左)谷尻 誠

1974年、広島県生まれ。

94年、穴吹デザイン専門学校卒業後、本兼建築設計事務所入所。
99年、HAL建築工房入所。

2000年、建築設計事務所Suppose design office 創業。

14年、SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd.を吉田愛と共同設立。

穴吹デザイン専門学校特任講師、

広島女学院大学客員教授、大阪芸術大学准教授。

(右)吉田 愛

1974年、広島県生まれ。94年、穴吹デザイン専門学校卒業後、株式会社井筒入社。
96年、KIKUCHIDESIGN入所。2001年、建築設計事務所Suppose design officeに参画。

14年、SUPPOSE DESIGNOFFICE Co.,Ltd.を谷尻誠と共同設立。

サポーズデザインオフィス

創業/2000年10月
代表者/谷尻 誠、吉田 愛
HEAD OFFICE/広島市中区舟入本町15-1
TOKYO OFFICE/東京都渋谷区大山町18-23 B1F
http://www.suppose.jp
https://www.facebook.com/shashokudo/
http://zekkeisite.com/

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