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発注者、受注者、利用者すべてに幸せをもたらす“施設参謀”を担う。使命は日本を社会先進立国に導くこと

発注者、受注者、利用者すべてに幸せをもたらす“施設参謀”を担う。使命は日本を社会先進立国に導くこと

山下ピー・エム・コンサルタンツ

「お客さまの施設参謀」を標榜する株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ。設計者でも施工者でもない第三者的な立場から企画、設計、施工、運営に至るまでを一貫してサポートするコンストラクションマネジメントとプロジェクトマネジメント(CM/PM)を展開する。建築や不動産に精通するプロ集団だが、あくまでマネジメントに徹するのが特色だ。1997年の創業から20年、日本におけるCM/PMのリーディングカンパニーの地位を不動のものにしている。

「いわば事業戦略と施設戦略の橋渡しをするのが私たちのマネジメントです」。そう語るのは同社代表取締役の川原秀仁氏。本来、建設プロジェクトは企業の事業戦略を体現するべきもの。だが建築業界は事業戦略を施設戦略に落とし込むことができず、事業戦略と施設戦略との間に乖離が生じがち。それが「期待していた建物と違う」という不満を発注者にもたらすのである。

また施設戦略から調達、設計、工事施工、施設運営に至る建設バリューチェーンも、それぞれ専門家がいるにもかかわらず、うまくリレーションされていないとの問題認識が同社にはある。そこで同社が建築と経営の橋渡し役となり、事業価値をより高める施設へと導いていくというわけだ。

「事業の根幹は『収入を得るフレームをつくり出す』『収入を上げる』『支出を抑える』という3つです。この3つをバランスさせながら、発注者とすべての受注者をwin -winの関係にすることが最も大切なこと。もちろん私たちは発注者の利益を第一に考えるのですが、それを受注者に無理強いすることはありません。ムダや非効率を排したプロジェクト運営を心がければ、双方の利益は相反しないで済みます」

1500億円規模の巨大プロジェクトとなった武田薬品工業の湘南研究所も、CM方式でなければ実現し得ないものだった。全世界の研究機能を集約した複雑極まりない施設をわずか4年でまとめるため、設計事務所や建設会社の計8社にデザインビルドによる協働を依頼。大人数により意思疎通が滞る恐れがあったが、敷地内に「設計室」を置くよう提案、全社を一堂に集めることで解決した。「おかげで設計も調達も工事計画も、コンカレントに進められた。建設コストも大幅に縮減することができました」

同社に勤務する106名のスタッフのうち、約半数がこうしたCM/PMを指揮するポジションにある。組織設計事務所で意匠設計を経験した者が比較的多く、ほかゼネコン設計部や都市計画、工事施工、施設発注者などバックグラウンドは様々。しかし「最初から任せられる人間は一人もいない」という。

「鍛えるのに最低1年、普通は3年かかります。多くが受注者の視点しか知りませんから、これを〝発注者のため〞という視点に切り替える必要がある」

そこで活用されているのは、同社が創業以来練り上げてきた600ページ以上の資料とマニュアル、帳票といったオリジナルの教育実践ツール。「これがあれば実務面のリスクはほぼ回避できる」と川原氏も言い切るほどの充実ぶりだ。加えてOJTを通じて、先輩社員の経験値やノウハウを注入。また、同社ではリタイア後のベテラン社員を「賢人」として招いており、彼らの知見も若手にとって成長の糧となっている。

「あとは本人のリーダーシップ、パッション、やり抜く力次第です。発注者も受注者も利用者も幸せにしないといけないのに、リーダーシップがなかったら仕事になりません。『あなたの仕事にどれだけの人やお金がかかっているか、よく考えなさい』と社員には話しています」

「当社では自分が一番働いているつもりです」と笑う川原氏もまた、パッションに突き動かされている人間の一人だ。

「まだ小さな企業ですが、この仕事は日本を変える面白さを持っています。そのために、まずは建設バリューチェーンをもっと合理的、効率的なものに改革したい。そして、建設業そのものを先進産業へと変革していきたいと考えています」

PROFILE


株式会社山下ピー・エム・コンサルタンツ

代表取締役社長 川原秀仁(かわはら・ひでひと)/

1983年、日本大学理工学部建築学科卒業後、

農用地開発公団、農用地整備公団、JICAを経て、

株式会社山下設計へ。

99年、山下ピー・エム・コンサルタンツの

創業メンバーとして参画。

現在、同社のCEO・COOとして企業ドメイン

全体の構築を担っている。一級建築士。

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